CHICO CARLITO沖縄といまを、声と言葉でつなぐ
CHICO CARLITO(チコ・カリート)は、沖縄県那覇市出身のラッパー。2012年にラップを始め、3年後には「ULTIMATE MC BATTLE GRAND CHAMPIONSHIP 2015」で優勝した。「フリースタイルダンジョン」の初代モンスターとして知った人も多いが、作品では沖縄の風景、家族の記憶、地元を離れて見えたものを歌ってきた。
2026年8月には4枚目のアルバム「紅碧」を発表。Awich、ONE OK ROCK、Paleduskと組むプロジェクトYAOでは、ラップとロックを横断している。高い声と独特のリズムの奥にある、曲の組み立て方や仲間との関係をたどりたい。
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CHAPTER 01 / SECTION 01CHICO CARLITOのプロフィール
1993年生まれは本人の取材で、11月28日は誕生日当日の本人投稿で確認できる。身長158.8cmは「C.H.I.C.O.」の歌詞で名乗る数値だ。本名や家族の現在の詳細は、公表された言葉以上に推測しない。
CHAPTER 02 / SECTION 02沖縄での音楽との出会いと進学
メロコアのバンドから、日本語ラップへ
高校時代には友人とメロディック・ハードコアのバンドを組み、ボーカルとギターを担当していた。歌うことは好きだった一方、ヒップホップにはなじまず、小学6年生でEMINEMを聴いたときにも抵抗があったという。
転機は高校卒業後の2012年5月。那覇の国際通りにあったバーで、小中学校の同級生がかけた鬼の「小名浜」を聴き、日本語ラップに引き込まれた。本人は、そのバーで働いていた唾奇の存在も、ラップを始めるうえで欠かせなかったと話している。
先輩が獲得した10万円と、最初の敗戦
同年9月、LOVEBALLの「HI-NIGHT MC BATTLE」で先輩が優勝する姿を見た。心を動かされたのはラップだけではなく、賞金10万円。「自分にもできる」と思い、帰り道には一人でラップをし、1週間後には書いた歌詞を唾奇に見せていたと紹介されている。聴き始めて間もなく、自分で言葉を書くようになった。
ただ、すぐ勝てたわけではない。本人の取材では、1カ月後に出た最初のバトルで、会場へ一緒に行った同級生スエヨシに初戦で敗れ、一緒に帰ったという。沖縄で出た3大会はいずれも1回戦敗退。初出場前には緊張で吐いた経験もあり、後に「8 Mile」を見て自分と重ねたと話す。
早稲田への受験と、沖縄を離れた理由
地元那覇の高校を卒業後、大学受験では早稲田を目指した。本人の初作についての取材によると、あと3点で届かず、1浪して別の大学へ進学した。進学先は獨協大学と紹介されてきたが、ここでは卒業や学部までは確定しない。2013年、大学進学を機に埼玉県草加市へ移った。
沖縄を出たのは、故郷を捨てるためではなかった。19歳まで知らなかった東京へ行き、地元と自分を別の角度から見て、沖縄へ戻るために一度離れたかったという。初期には30歳までに戻る構想も語っていた。その後の居住地をこの予定だけで決めることはできないが、沖縄との距離を自分で考える姿勢は作品にも残っている。
CHAPTER 03 / SECTION 03名前の由来と仲間との出会い
祖父のあだ名と映画「カリートの道」
両親と祖母のいる家庭で育ち、亡くなった祖父はプエルトリコ系アメリカ人だった。MCネームの「CHICO」は、その会ったことのない祖父のあだ名に由来する。
名前をCHICOにしようと考えていたころに見た映画が「カリートの道」だった。主人公が祖父と同じプエルトリコ系で、公開年が自分の生年と同じ1993年だった偶然もあり、CARLITOを組み合わせた。映画の主人公の生き方を、そのまま自分の経歴と重ねた名前ではない。
古着屋で探した仲間、TENGGとTKda黒ぶち
上京して間もなく、家の前にあった古着屋HULAHOOPで、近くにラップをしている人がいないか聞いて回った。そうして連絡先を得たTENGGと、ラーメンを食べに行ったのが出会いだった。元の紹介ではメールアドレスとされていたが、本人はTwitterだったかもしれないと回想しており、連絡手段は一つに決められない。
TENGGに誘われてTKda黒ぶちのスタジオへ行き、皆で一発録りをした。「大脱走」のイベントにも呼ばれるようになり、TENGG、ARISTOとの3MCユニットBang Da Rhythmや、大脱走クルーにつながっていく。北千住のサイファーでKuragaly productionの0032と出会ったことも本人が語っている。
2013年8月ごろ、浦和BASEでの「大脱走」で初めてライブをし、出演を重ねるようになった。知名度だけで仲間を選ぶのではなく、同じ場で曲を作り、ライブをした関係が、初作のメンバーにもつながっている。
CHAPTER 04 / SECTION 04MCバトルから作品へ
2014年、「戦極MC感謝祭 其の二 ミュージックビデオ杯」で優勝し、賞品のMV制作権で「C.H.I.C.O.」を発表した。翌2015年にはUMBの沖縄予選で敗れた後、リベンジ枠から本戦へ進み、全国優勝を果たす。ラップ開始からおよそ3年での頂点だった。
そのころ本人は、バトルをライブのオファーや音源へつなぐ手段だと話していた。初作の取材でも、名前を知ってもらい、アルバムを売り、大きな会場を埋めたいと説明している。バトルの価値を軽んじる発言ではなく、その先にある活動まで考えていた。
「フリースタイルダンジョン」では初代モンスターを務めた。初期に語った「今後は出る予定がない」という言葉で、その後の出場まで止めてしまうことはできない。2026年8月11日には、OZworldと組んでKアリーナ横浜の「BATTLE SUMMIT III」に出場。決勝でZeebraとT-Pablowのタッグを破り、チームで優勝賞金5,000万円を獲得した。
CHAPTER 05 / SECTION 05服装と声、フロウの特徴
Lafayetteの服を着るスタイル
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初期の服装では、神奈川県藤沢発のストリートブランドLafayetteを愛用していた。2003年に始まった同ブランドは、ニューヨークを感じさせる服を軸に、ヒップホップ、スケートボード、グラフィティなどの文化を取り入れている。
着用したアイテムとして「LAST SUSPECT SUREbreak S/S SHIRTS」「REFLECTOR PIPING NYLON ANORAK JACKET」「REFLECTOR PIPING NYLON TRACK PANTS」が紹介されていた。着用後に人気を集め、売り切れたという当時の紹介は、現在の在庫や販売状況を示すものではない。
高い声と、ビートの後ろを使うフロウ
CHICO CARLITOの声は高く、言葉が抜けてくる。ビートの少し後ろへ引くような乗り方も持ち味だ。初めて一緒に録音したとき、J-TAROがTKda黒ぶちに「0.5拍ずれているが、意識しているのか」と尋ねたと、本人は回想している。これは全曲を機械的に半拍遅らせているという測定値ではなく、仲間が驚いたリズム感の話だ。
本人は、フロウを細かく計算していたわけではないと話していた。一方、マイクは会場に合わせて握り方を変え、ハウリングしやすければヘッドを覆わず、高い声に低域を足したいときは適度に手をかぶせるという。感覚だけに任せるのではなく、声がどう届くかにも意識を向けている。
沖縄を誇る明るさだけでなく、自分のルーツや背負うものへの葛藤も歌う。前向きな曲、沈んだ場面を描く曲の両方があり、高い声の印象だけでは作品の温度を決められない。
CHAPTER 06 / SECTION 06CHICO CARLITOのMBTIを編集部が考える
Djtube編集部は、公開された制作の選択から、CHICO CARLITOをENFP寄りと推定する。本人が公表した診断結果ではない。
地元と内地の場面をアルバムの流れにし、電話の音も自分で再現して日常の移り変わりを伝えたこと、TENGGやARISTOを含む身近な仲間を制作に迎えたことに着目した。出会いと自分の経験を、別の表現へ結び付けて広げる姿勢をENFPという仮説で読む。
ただし、初作はテーマ、作家、曲順を先に決める緻密な作り方でもあった。内側の価値観を守って作品を組むINFPという読み方も可能だ。人前での明るさやバトルの強さだけで外向型とは決められず、家族のルーツ、健康、私生活から性格を推測するものでもない。
CHAPTER 07 / SECTION 07アルバムでたどる沖縄と内地
初作Carlito’s Wayの曲順に置いた人生
2016年12月7日発売の「Carlito’s Way」は、Timeless Edition Rec.から出た初のフルアルバム。地元沖縄を歌いたいという考えが軸にあり、リード曲「C.H.I.C.O.」から沖縄の曲が続き、「Skit」を挟んで内地の話へ移る。自分が歩いてきた順序を、一枚の流れにした。
本人は、最初にテーマ、トラックメイカー、曲順のセットリストを作ったと説明している。録音を始めたときに書けていたのは2〜3曲。録っては次の歌詞を書く作業を約2カ月続け、沖縄の情景、世界への思い、安らぎや歯がゆさを形にした。
客演はBang Da RhythmのTENGGとARISTOを除き、沖縄の先輩たち。RITTOと共演するならOlive Oilと決めて声をかけ、D.D.S、CHOUJI、唾奇らも参加した。Osurek Bertopが音の統一感を支えた。沖縄から内地へ移ることと、仲間から次の仲間へ声が渡ることが、曲順の中で重なる。
当時はアルバムの売り上げで大きなヒップホップのイベントを開く夢も話していた。R-指定、Jinmenusagi、唾奇、KID FRESINO、Ryugo Ishida、BAD HOPら同世代への信頼を挙げていた。これは初作時点の構想で、イベントの実現をここで確定する話ではない。
Sandra’s Son、Grandma’s Wish、そして紅碧
2022年2月9日の2作目「Sandra’s Son」、2023年6月30日の3作目「Grandma’s Wish」へと、アルバム制作を重ねた。後者には柊人を迎えた「Let Go」があり、沖縄から上京した自分の気持ちを言葉にしている。
2026年8月10日発表の4作目「紅碧」は全11曲。「Red and Blue」から始まり、「Broadcasting feat. 柊人 & ジェロニモR.E」「In return」「ユガフ feat. OZworld, 柊人 & CHOUJI」「Never alone feat. AI」「I’ll be there feat. 田我流」などを収める。以前からの仲間に加え、AIや田我流らとの共演も聴ける一枚だ。
配信の作品紹介では、ラッパーとしてだけでなく、父親としての覚悟や葛藤に向き合うアルバムと説明されている。子供の名前や人数、配偶者の情報まで示した説明ではないが、初作から重ねた時間が、作品の題材にも表れている。
CHAPTER 08 / SECTION 08代表曲と近年の作品
C.H.I.C.O.の原点になった2014年のMV
戦極MCBATTLEが公開した、MV杯優勝賞品としての映像。「C.H.I.C.O.」がアルバムに先がけて世に出た版だ。2016年の収録版は「Album Edit」とされており、このMVと同じ編集の音源として扱わない。
C.H.I.C.O. (Album Edit)
「Carlito’s Way」の2曲目に置かれた「Album Edit」。OSUREK BERTOPが作曲した。映像は公式配信音源で、先に紹介した2014年のMVとは版が異なる。以下はアルバム版の歌詞から読む。
金銭的な余裕と、人生を面白くすることを切り離す短句だ。自分の名前や身体の数値を名乗る自己紹介の中に、どう音楽と生きるかという姿勢も入っている。技巧を見せるだけでなく、自分の時間をどう使うかまで伝わる。
Orion's belt feat. RITTO
初作に収めたRITTOとの共演曲で、Olive Oilがビートを手がけた。Kuragaly SOUNDSによるMVは、那覇の風景と二人の言葉へ向かう入口になる。明るい沖縄のイメージだけで終わらない曲だ。
土地への誇りの中に、答えを出し切れない問いも残っている。共同曲の歌詞全体では、海や太陽の色、祖父母の世代、軍用機も重なり、沖縄を単純な観光の風景へ閉じ込めない。この短句だけから個人の政治的立場や家族の経歴を推測するものではない。
Let Go feat. 柊人
2023年6月30日発売の「Grandma’s Wish」に収録した柊人との曲。作詞はCHICO CARLITOと柊人、作曲はELIONEとA-KAY、プロデュースはA-KAY。ここでの映像はアルバムの公式配信音源で、後の生バンド版とは異なる。
得たい成功と手放したくないつながりが、交換するチケットという比喩で重なる。東京で受けた助けや、人に会いに行く場面があるから、単なる成功願望よりも、人との距離が気になる曲として読める。共同曲の言葉であり、本人の今の家庭状況へ直結させない。
Let Go feat. 柊人 / THE FIRST TAKE
2023年11月10日公開の「THE FIRST TAKE」第376回。柊人と共に、同番組だけの生バンドアレンジで一発撮りした。アレンジはA-KAY、バンドディレクションはMari Ishidaが担当。音源は2024年1月31日に別版として配信された。
LONGINESS REMIX / THE FIRST TAKE
2023年1月4日公開の「THE FIRST TAKE」第279回。沖縄のSugLawd FamiliarからVanity.K、CHICO CARLITO、Awichが出演した。2022年12月16日発売のリミックスに続く一発撮り版で、配信版は2023年2月8日発売。曲はRiza Penjoelが手がけている。
成功の数字を語る前に、仲間と歩いた具体的な道を置く。国際通りという身近な場所と理想との距離がつながり、沖縄から外へ届く曲でも足元を失わない。ここでは一発撮り版の共同曲全体から読み、原曲や別のリミックスの歌詞と混ぜない。
Red and Blue
2026年8月10日発売の「紅碧」を開くソロ曲。OSUREK BERTOPが作曲とプロデュースを担い、録音、ミックス、マスタリングはA-KAY。本人側から配信された公式音源で、アルバムの色を最初に提示する。
碧い炎と紅い血潮を重ねた曲の最後に、限界を自分で決める意志が置かれる。受け継ぐものと、自分で進路を選ぶことが同じ曲にあり、アルバム名の二つの色も固定的な人物分類ではなく、内側の熱を表すものとして読める。
In return
2026年5月13日に先行シングルとして出し、「紅碧」の6曲目にも収録したソロ曲。作曲はRhymeTube、録音からマスタリングまではA-KAYが担当する。映像は先行シングルの公式配信音源。以下は同名アルバム収録曲の掲載歌詞から読む。
周囲の模倣や見せ方へ目を向けながら、自分が何者になるかは自分で選ぶと繰り返す。仲間への返礼と、見放さなかった人への思いも並ぶため、独立心と他者への感謝が対立せず、一つの曲を動かしている。
ありふれた世界の果てに
2026年9月4日発売のYAOの2作目。作詞はAwich、CHICO CARLITO、KAITO、作曲はDAIDAIとTaka、プロデュースはDAIDAI。10月22日公開の公式MVには宮沢氷魚、森カンナ、山田孝之らが出演する。参加アーティストと、物語を演じる出演者は別に捉えたい。
正しさを持ち寄るだけでは人を傷つけ合うこともある、という問いを開く短句だ。先祖から受け継ぐ灯火や同じ身体の感覚も歌われ、違う立場の人が共に生きる方向へ言葉が向かう。共同曲全体の表現として読み、この一行をCHICO CARLITOの単独パートとは確定しない。
CHAPTER 09 / SECTION 09共演作品とリスナーの反応
初作の仲間と、他のアーティストへの客演
- Champ Roots feat. D.D.S
- Sons of Kuragaly feat. TENGG & ARISTO
- 一陽来復 feat. CHOUJI & 唾奇
- KEN THE 390「真っ向勝負」feat. MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻、KOPERU、CHICO CARLITO、晋平太
- 10イヤアズ feat. Skipp、へびちゃん、TENGG、tututhematoo、ARISTO、CHICO CARLITO
- 10000 POUND feat. テークエム、HANG & CHICO CARLITO
- Orion’s belt feat. RITTO/Beats by Olive Oil
初作の共演曲に加え、他のアーティストの曲へ入る客演も活動の一部だ。「真っ向勝負」ではKEN THE 390のもとに、MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻、KOPERU、晋平太らが集まった。音源の共演と、漢 a.k.a. GAMIとタッグを組むようなバトルでの共演は、別の形のコラボレーションとして見られる。
2026年の客演と、YAOの活動
2026年にはGeGの「Timing feat. ELIONE & CHICO CARLITO」、Bonberoの「Yarudake Remix feat. ACE COOL, CHICO CARLITO」、SugLawd Familiarの「% feat. CHICO CARLITO, Disry」などにも参加した。自分のアルバムだけでなく、プロデューサーや別のラッパーの作品へ声を加える活動も続いている。
YAOはAwich、CHICO CARLITO、ONE OK ROCK、Paleduskの4組によるプロジェクト。2026年7月7日の「777」で始動し、9月4日に「ありふれた世界の果てに」を発表した。沖縄に根を置く言葉が、違う背景のメンバーの音楽と出会っている。
声や共演へ寄せられた当時の反応
過去のリスナー投稿には、バトルの勢い、聞き心地、共演の意外性に目を向けたものがある。一人の感想をファン全体の評価へ広げず、当時どんな入口から聴かれていたかを知る言葉として読む。
ヒプマイから入ってもっと深いとこ入りたい人にはCHICO CARLITOさんあたりおすすめなんだ
UMB2015
CHICO CARLITO vs GOTIT
チコの勢いがやばい。 https://t.co/WaLghOTU6t
#モンスターハンター 渋谷hazard Ken The 390 ft. CHICO CARLITO "真っ向勝負" いいの観れたー!!やっべェぞ! https://t.co/Tl2ns1zmz1
DABOとCHICOって意外な組み合わせだ。
すげーいい曲、2人ともかっこいい! https://t.co/0bpxo8YAtf
戦極10章
CHICO CARLITO vs 黄猿
CHICOのラップは聞き心地がいい。 https://t.co/I6MBwobfir
元の記事には「Orion’s belt」をまた聴きたくなるという反応もあった。現在取得できない投稿の言い回しを引用として作り直すことはしないが、繰り返し聴きたくなる曲として受け取られたことも、当時の紹介の一部だった。
CHAPTER 10 / SECTION 10CHICO CARLITOについてよくある質問
島を離れて得た言葉を、次の声へつないでいく
Djtube 編集部


