Awichエイウィッチ
Awich(エイウィッチ)は、沖縄県那覇市出身のラッパー。本名は浦崎亜希子、1986年12月16日生まれで、39歳となる。昭和薬科大学附属高校で学び、アトランタへの留学、結婚・出産、夫との死別を経験した。帰国後にYENTOWNへ加入し、「Remember」「Queendom」などを発表。日本語・英語・沖縄の言葉を使い、家族や故郷、自分の生き方を歌っている。
2022年には初の日本武道館ワンマン、2024年にはコーチェラ出演を実現。2025年にはRZAが全面プロデュースした「Okinawan Wuman」を発表した。海外で作品を作り、舞台に立つ現在までを、生い立ちや人との関係からたどる。
| 疑問 | 短い答え |
|---|---|
| 名前はどう読む? | エイウィッチ。本名の亜希子をAsia Wish Childと英語に置き換え、縮めた名義。 |
| 学歴は? | 昭和薬科大学附属高校を経て、アメリカ・アトランタの短大を卒業。ジョージア州立大学への進学は実現しなかったと本人が説明している。 |
| 家族は? | アメリカで結婚し、一人娘を出産。2011年に夫と死別し、娘と沖縄へ戻った。娘・Yomi Jahとの共演もある。 |
| どんな人物? | 9歳頃から詩を書き、2Pacに影響を受けた。自分の経験を伝えるとき、誰に届いてほしいかに応じて言葉を選ぶラッパー。 |
CHAPTER 01 / SECTION 01Awichのプロフィール|本名・年齢・身長・名前の由来
Awichは沖縄県那覇市出身、1986年12月16日生まれのラッパーだ。日本語と英語に加え、沖縄の言葉も作品へ取り入れる。YENTOWNのメンバーとして、ソロでも共演でも活動している。
Awichの読み方はエイウィッチ
読み方はエイウィッチ。「アウィチ」「アウィッチ」と読まれやすいが、公式にもエイウィッチと表記されている。
亜希子からAsia Wish Childへ。14歳で決めた名前
Awichは、本名の亜希子をAsia Wish Childへ置き換え、縮めた造語だ。亜はアジア、希は希望、子は子どもという意味を持つ。2024年のラジオ番組「木村拓哉 Flow」では、14歳のときにレコード店の仲間からラップ名を尋ねられ、その夜に考えたと明かしている。
翌日に名前を発表すると、分かりにくい、発音しにくいと言われた。それでも一度決めた名前を使うと押し通したという。名前を作った理由だけでなく、自分で選んだ表現を譲らない当時の姿も見える。
CHAPTER 01 / SECTION 02Awichの現在の活動|国内外の制作とライブ
Awichはソロ作品の発表に加え、日本国外のラッパーや、ジャンルの違うバンドとの制作にも参加している。2025年の「Okinawan Wuman」に続き、2026年には日本版リミックスや共同プロジェクトYAOの作品が発表された。
| 年月 | 作品・活動 | 内容 |
|---|---|---|
| 2025年1月 | Frontiers | 「シャングリラ・フロンティア」のオープニングテーマ。自身初のアニメタイアップ |
| 2025年2月28日 | ASIAN STATE OF MIND | RASEN ALLSTARSの企画でアジア各地のラッパーと共演 |
| 2025年10月8日 | 黄金の彼方(Awich × ALI) | 劇場先行版「ゴールデンカムイ 札幌ビール工場編」の主題歌として配信 |
| 2025年11月21日 | Okinawan Wuman | RZAが全面プロデュースしたアルバム |
| 2026年1月 | 黄金の彼方/Wax On Wax Off -Japan Remix- | 前者はTVアニメ「ゴールデンカムイ」最終章OP。後者は1月7日配信 |
| 2026年7月7日 | YAO「777」 | Awich、CHICO CARLITO、ONE OK ROCK、Paleduskの共同プロジェクト |
| 2026年9月4日 | YAO「ありふれた世界の果てに」 | 共同プロジェクトでの作品発表 |
| 2026年11月17〜27日予定 | Red Bull Symphonic 2026 | 大阪・福岡・仙台・横浜でのオーケストラ共演公演 |
海外での制作と、アジアのラッパーとの共演
「RASEN ALLSTARS」はアジア各地のラッパーを集めたプロジェクト。「ASIAN STATE OF MIND」にはJay Park、KR$NA、Masiwei、VannDaが参加している。RZAとの制作がアメリカのヒップホップとの接点なら、こちらはアジアの異なる言語や地域との接点になる。
2025年には「Frontiers」と「黄金の彼方」のアニメ関連作品も発表した。「黄金の彼方」は、2025年の劇場先行版の主題歌を経て、2026年1月放送開始のTV最終章オープニングへ起用された。楽曲の配信日と、テレビで使われ始めた時期は異なる。
2026年はYAOにも参加。11月にはオーケストラとの公演
YAOは4組による共同プロジェクトだ。Awichがバンドへ恒常的に加入したという意味ではなく、異なる活動をしてきたアーティストが作品を作る取り組みとして紹介したい。11月のRed Bull Symphonicは、10月16日時点ではこれからの公演となる。
公演の最新案内はAwich公式サイトとRed Bull Symphonic公式ページで確認できる。
CHAPTER 01 / SECTION 03Awichの生い立ち・学歴と経歴年表
沖縄で育ち、9歳頃から言葉を書き続ける
Awichは那覇市に生まれ、幼いころは身近な米軍基地やアメリカ文化に憧れを持っていた。9歳頃から日記や詩を書き始める。夜が来て太陽が消えると、知らない世界が広がるようで怖く、眠れない思いを言葉にしていたと振り返っている。
書くと癒されるというか、和らいだんですよね。
Awich / FNMNL誰かへ発表する前に、まず自分の感情を受け止めるために書いていた。その習慣は、後にラップへつながる。
昭和薬科大学附属高校からアトランタへ
高校は昭和薬科大学附属高校。地元のプロダクションに所属し、ラップバトルにも精力的に参加していた。本人は、遊んでいる一方で勉強もするというギャップが好きだったと話している。学校の出し物にも進んで参加し、歌を披露していた。
高校卒業後は、ビジネスとヒップホップを学ぶためアトランタへ渡った。留学中に夫となる男性に出会い、クラブへ通う生活から勉学に集中する生活へ移り、結婚・出産を経験する。
本人によると、アトランタではまず短大に通い、卒業後はジョージア州立大学へ進む予定だったが、実際には進学していない。短大を卒業した後、家族でインディアナポリスへ移ったと説明している。大学名だけを挙げて、ジョージア州立大学の卒業生とするのは誤りだ。
Awichの生い立ち・活動年表
CHAPTER 01 / SECTION 04Awichの夫・娘と、母親としての生き方
アメリカでの結婚、2011年の夫との死別
Awichはアトランタで出会ったアメリカ人男性と結婚し、21歳で一人娘を出産した。家族の生活については、夫の名前を出すと仕事にも就きにくく、娘が寝ている間に発砲が起きるような状況もあったと本人が語っている。
2011年に夫を亡くし、娘と沖縄へ戻った。夫が銃撃によって亡くなったことは、本人取材でも公にされている。大切な経験をどう言葉にするか悩み、音楽へ本格的に戻るまで時間を要した。ただし、その期間をすべての創作が止まっていた時期とするのではなく、2014年のManamiとの作品など、その間の活動も合わせて見たい。
娘へ隠さず話し、二人で海へ向かった
子どもへ事実を話さないのは大人の都合であり、きちんと話せば子どもは対応できる、というのがAwichの考えだ。夫の死も隠さず、娘の質問に一つずつ答えていったと話している。
夫の遺志を受け、娘と二人で誰もいない海辺へ散骨に行った。灰まみれになりながら、父親が風や水、娘の肌や心になってほしいと願ったという。この場面は、後に「Ashes」で表現された。悲しみの説明だけで終わらず、残された二人がどう生きるかへ向かう曲になっている。
娘・Yomi Jahと音楽でも共演する
娘はYomi Jahとして、Awichの楽曲「Jah Love」や「TSUBASA feat. Yomi Jah」へ参加している。親子としての関係に加え、作品でも声を重ねている。
母としてのAwichには、強く見せる表現とは別の顔もある。本人は子育てで真実を伝えることを大切にし、癒やされる存在として娘を挙げる。本人たちが作品や取材で公開している活動を中心に、その関係をたどりたい。
CHAPTER 02 / SECTION 05Awichがラップを始めたきっかけ|詩、テレビ、2Pac
ラップを知った入口は、子ども向けのテレビ番組だった。初めて触れたときには、これは何だろうと驚いたという。すでに詩を書いていたため、ラップという表現に出会うと、自分はラッパーだとすぐに感じたとも話している。
誰かになろうとするより前に、日記や詩を書く自分へ名前が付いた。その後、地元のレコード店や仲間との出会いを通じて、人前でラップする活動へ進んでいった。
2Pacの歌詞をノートに書き、意味を調べる
2Pacの第一印象には、怖そうだが格好よく、気になるという両方の感情があった。実際に聴くと、歌詞の過激さにトラウマになるほどの衝撃を受けたと語っている。
Awichは歌詞をノートへ写し、意味を調べた。本人がドリルにたとえたように、音楽を聴くだけでなく教材として読み込んでいた。英語とラップの言葉を、同時に身につけていった経験である。
CHAPTER 02 / SECTION 06AwichとYENTOWN|加入の経緯と仲間との関係
YENTOWNは、Awichが所属するヒップホップクルーだ。レーベルや所属事務所という意味だけで捉えず、ラッパー、DJ、プロデューサーらが一緒に作品や現場を作る集団として見たい。
Awichは、それぞれの目的を持つアウトサイダーが集まり、一攫千金を狙いながらも愛にあふれているクルーだと説明している。後から加入した自分を、みんなのお姉さんのような存在とも表現した。
YZERRの言葉と、Chaki Zuluとの制作
YZERRから、今のヒップホップシーンを引っ張るべき存在であり、もっと先へ行けると励まされたことがあった。Awichはその言葉を受け、自分に足りないのは覚悟や腹の括り方ではないかと考えたという。
Chaki Zuluからも、なぜ音楽をやらないのか、一緒にやろうと声をかけられていた。2017年の「8」へつながる制作では、kZmへ聴かせた「Crime」をきっかけにChaki Zuluとの接点が生まれたと話している。
加入の際にはChaki Zuluから、Awichにも何か冠が欲しいという話があり、自分からYENTOWNに入れてほしいと申し出た。制作への誘いを受けたことと、クルー入りを自分で求めたことは、両方ともその歩みの一部だ。

CHAPTER 02 / SECTION 07Awichの交友関係|AI、沖縄の仲間、共演者たち
Awichの周囲には、YENTOWNの仲間に加え、ANARCHY、YZERR、NENE、OZworld、AI、唾奇らがいる。誰とどの作品を作ったかを見ると、クルーや地域を越える関係が分かる。
AIとの出会い|憧れと、会った瞬間の涙
AIはAwichのMVやInstagramを見て、格好いいと感じていた。AwichもAIを早くから意識し、自分にとって日本の女性ラッパーの先駆けのような存在として見ていたという。AIが日本初の女性ラッパーだと感じていたという話は、Awich個人の当時の印象である。
Awichは、悔しい、自分も急がなければと駆り立てられたことも話している。尊敬する人がいることは、ただ追いかけるだけでなく、自分の活動を進める力にもなっていた。
二人は「NAMIMONOGATARI」で初めて会い、互いに涙が出て二人だけの世界に入ったという。その後、AIの「Not So Different」のリミックスで共演した。2021年の対談では、音楽だけでなく、家庭や社会についても言葉を交わしている。
地元の共演者と、女性ラッパーたち
沖縄出身のOZworldとは「DEIGO」で共演。ANARCHYとの「WHORU?」、kZmとの「Crime」、YOUNG JUJUとの「Remember」など、相手ごとに異なるやり取りを作品に残している。NENEらとの交流もあり、一人の実績だけでなく、互いに参加し合う活動が続いている。
CHAPTER 02 / SECTION 08Awichのファッション・読書・好きなもの
ストリートからラグジュアリーまで
Awichの着用ブランドとして紹介されてきたのは、THE BLACK EYE PATCH、HELLY HANSEN、Reebok、MCM、Fendi、Palm Angels × Missoni、RICHARD MILLE。ストリートウェアとラグジュアリーを同じ一覧に持つ。着用歴と、現在のスポンサー契約は区別しておきたい。
- THE BLACK EYE PATCH
- HELLY HANSEN
- Reebok
- MCM
- Fendi
- Palm Angels × Missoni
- RICHARD MILLE
関心は思想、身体、ものづくりへ広がる
好きなチャンネルとして挙げていたのは、Yuval Noah Harari、アダム徳永のスローセックス大学、TheCrafsMan SteadyCraftinだ。思想や歴史、身体の話から工芸まで、関心の方向は一つに限られない。
ハラリについては、著作をほぼすべて読み、インタビューもほとんど見ていると話している。好き嫌いは分かれるだろうとしたうえで、話の内容に納得するところがあると述べた。読書は、作品のために難しい言葉を集めるというより、自分が世界をどう捉えるかを考える時間にもなっている。
TheCrafsMan SteadyCraftinでは、解説の声が落ち着くところも好きだという。言葉の意味を考えるだけでなく、声の質や、作業を見て過ごす時間にも惹かれている。
CHAPTER 03 / SECTION 09AwichのMBTI|ENFJと考える根拠と限界
Djtube編集部では、AwichのMBTIをENFJと推定している。本人公表の診断結果ではなく、公開された言動や作品をどう読むかという編集部の見解だ。A/Tまでは判断しない。
| 指標 | 読み取りの材料 | 限界 |
|---|---|---|
| E(外向) | 自分からYENTOWN入りを求め、共演者と制作を進める | ステージ上の役割や仕事の進め方だけでは、私生活の外向性は分からない |
| N(直観) | 日常の経験を、社会・思想・言葉の意味へ結びつけて語る | 現実の家族や故郷を具体的に歌う面もある |
| F(感情) | 娘への接し方や、聴き手へ何を伝えるかを重視する | 家族を歌うことだけでFとは決められない |
| J(判断) | 作品や公演、プロジェクトを形にし続けてきた | 企画の実現にはチームの力もあり、本人の型だけに帰せない |
子どものころから内面を言葉にしてきた習慣を重く見れば、INFJという読み方もできる。海外制作やプロジェクトを進める姿に注目すれば、ENTJとも読める。一方で、誰に何を届けるか、相手とどう関わるかを繰り返し考える発言から、編集部ではENFJという見方を採っている。
公演の規模が大きくなったことや共演者の数だけを、性格の証拠にはできない。Awichが選んで公開している姿と、その人の内面全体は同じではない。
CHAPTER 03 / SECTION 10Awichのラップスタイル|言語を変えて、誰に届けるか
Awichの特徴は、日本語、英語、沖縄の言葉を使い分けるフロウと、社会や思想を扱いながら自身の経験を語るリリックにある。フロウはラップで言葉を運び、ビートへ乗せる方法のこと。女性ラッパーを指すフィメールラッパーという呼び方でも知られるが、作品では母親、地元の一人、共演者という複数の立場が現れる。
本人は英語の、誰が何をするのかを明確に言いやすいところが自分に合うと説明している。その一方で、日本の女性や男性へ届けたい内容なら日本語を選ぶ。沖縄について伝える曲では沖縄の言葉を使うという。
誰に聴いてほしいかなって考えた時に切り替えが起こりますね。
Awich / ABEMA TIMES単に語学ができるから混ぜるのではなく、受け取る人を考えて言葉を変える。聴き手が変われば、使う言語を選び直すこともある。
強い言葉と、静かな言葉の両方を使う
「Queendom」では自分の場所を取りに行く強い自己像を示し、「紙飛行機」では飛べないものに感情を重ねる。「Ashes」では風や水へ視線を向ける。同じ人生を話す場合でも、宣言、比喩、祈りで伝わり方が変わる。
読書や2Pacの歌詞を読み込んだ経験、アトランタでの生活は、その表現を考える材料だ。ただし、特定の経験がすべての曲の意味を決めるわけではない。作品の言葉を一曲ずつ読むことで、Awichが何を伝えようとしているかに近づける。
CHAPTER 03 / SECTION 11Awichの人生を支える7曲|憧れと自分の作品
本人が選んだ「人生を支える大切な7曲」には、他のアーティストの4曲と、自分の3曲が並ぶ。憧れの曲だけでなく、自分で書いた曲も人生の支えとして捉えている。
- SPEED / Body & Soul
- Cocco / 強く儚い者達
- 2Pac / Ambitionz Az A Ridah
- Bjork / Unison
- Awich / Crime feat. kZm
- Awich / Remember feat. YOUNG JUJU
- Awich / Queendom
SPEED「Body & Soul」とCocco「強く儚い者達」
SPEEDとCoccoは、どちらも沖縄出身。日常で聴いて育った音楽と、のちに自分が歌う場所が重なる選曲だ。とくにCoccoのような、簡単には一つの意味に決まらない言葉も、Awichの表現の入口にあった。
2Pac「Ambitionz Az A Ridah」
2Pacは、Awichが歌詞を調べて読み込んだラッパーだ。強い言葉への驚きと憧れが、聴くことから自分でラップすることへつながった。本人が選ぶ7曲にも、その存在が残っている。
Bjork「Unison」
Awichは、落ち込んでいた感情を少しずつ上げてくれた曲として挙げている。ラップの手本になる曲だけでなく、自分の気持ちを支えた音楽も大切にしていることが分かる。
「Crime feat. kZm」|Chaki Zuluとの制作へつながった曲
「8」に収録されたkZmとの共演曲。途中まで作っていた曲をkZmに聴かせたことが、Chaki Zuluとの出会いとアルバム制作へつながったと本人が説明している。客演とは別のアーティストの曲へ参加すること。この曲では、その共演自体が次の活動を開く接点になった。

「Remember feat. YOUNG JUJU」|仲間と声を重ねる
YOUNG JUJUとの共演曲で、「8」に収録。自分の名前や過去を語る曲と並べると、仲間と場を共有するAwichの一面に触れられる。本人の選曲に入っていることも、この曲を知る手掛かりになる。
「Queendom」|自分の人生を、立つ場所へ変える
Awichは、自分のこれまでの人生をまとめ、さまざまなドラマがあった曲だと話している。2022年の初武道館公演「Welcome to the Queendom」の名にもつながる作品だ。
最初に置かれるのは、女が来ること、君臨することへの周囲の驚きだ。そこへブルドーザーの比喩を返し、既存の場を耕して新しい秩序を作るという自己像へ進む。単に強いと宣言するのではなく、驚かれる側から場を変える側へ視点を動かしている。
CHAPTER 03 / SECTION 12Awichを知る代表曲|紙飛行機・Ashes・Shook Shook
自分の歴史をまとめた「Queendom」に加え、静かな感情と強い押し出しを聴き比べられる3曲を紹介する。YouTubeの映像と歌詞の一部を合わせると、一つの肩書きでは捉えにくい表現の幅が見える。
紙飛行機|飛び立てないものへ重ねる感情
飛び立ってほしいのに、まだ飛べない紙飛行機。小さく、身近で、壊れやすいものを通して、動き出したくても動けない気持ちを描く曲だ。
紙飛行機には軽さがあるが、ここでは苦痛やナイフという鋭い言葉が重なる。飛べないものを柔らかい比喩で見せ、その内側にある痛みを隠さない。前へ進むことを大きな言葉で励ます曲とは、違う距離で感情へ触れている。
Ashes|娘と海へ向かった日の祈り
亡き夫の灰を娘と海へ流した経験をもとにした、「8」の収録曲。失った人を過去へ閉じ込めるのではなく、二人の周りにある自然や、生きる力へ戻ってほしいと願う。
水や風、太陽や雲、山や木々という外の景色から、髪や肌、心、愛する力へと、言葉が娘の内側へ近づく。自然へ戻ることと、残された人の中で生きることが同じ祈りになっている。悲しさの大きさを説明するより、その後も生きていくために必要なものを一つずつ挙げる表現として読める。
Shook Shook|強い自己像を前へ出す
2020年のメジャーデビューEP「Partition」へつながる楽曲。家族との別れや内面を静かに歌う前の2曲と合わせると、相手へ向けて自分を強く提示する表現も持つことが分かる。Awichを、悲しい過去を歌う人という一面だけで捉えないためにも聴きたい曲だ。
CHAPTER 04 / SECTION 13Awichの共演曲|ANARCHY、OZworldとの関係
kZmとの「Crime」、YOUNG JUJUとの「Remember」に続き、クルーの外へ広がる代表的な参加者がANARCHYとOZworldだ。共演では、それぞれのラッパーの声や立場が同じ曲に並ぶ。
WHORU? feat. ANARCHY
「8」に収録されたANARCHYとの共演曲。Chaki Zuluが制作を手がける。Awich一人の経歴だけでなく、どのラッパーと同じ曲に立ってきたかを知る一曲になる。

DEIGO feat. OZworld
同じ沖縄出身のOZworldを迎えた曲。題名のデイゴは沖縄の県花だ。故郷を題名に置き、同郷の相手と作品を作る姿は、アメリカでの制作や海外出演と並ぶAwichの活動である。

CHAPTER 04 / SECTION 14Awichの日本武道館・コーチェラと沖縄への思い
2022年3月14日、Awichは初の日本武道館ワンマン「Welcome to the Queendom at 日本武道館」を開催した。ANARCHY、KEIJU、JP THE WAVY、YZERR、kZmらがゲストとして参加した。
公演名には「Queendom」が使われている。自分の人生をまとめた曲の名前が、大きな会場へ集まる人たちと共有する言葉になった。単独名義の公演であっても、そこには共に作品を作ってきた仲間がいる。
| 年 | 出来事 | 人物像につながる点 |
|---|---|---|
| 2022年3月14日 | 初の日本武道館ワンマン | 「Queendom」を掲げ、共演してきた仲間も集まる |
| 2024年 | コーチェラへ出演 | 日本国外の観客へ自分の音楽を届ける |
| 2024年 | 初代沖縄グローバルアンバサダー就任 | 故郷の魅力を海外へ伝える役割 |
| 2025年 | ROCK IN JAPAN、VIVA LA ROCKなどへ出演 | ヒップホップ以外の観客とも接点を持つ |
海外の舞台に立つことと、沖縄の名前を背負うことは、Awichの活動で同時に進んできた。コーチェラに出演した2024年には、初代沖縄グローバルアンバサダーにも就任している。故郷は過去の出発点だけでなく、今も伝え続ける場所だ。
CHAPTER 04 / SECTION 15Okinawan Wuman|AwichとRZAの共同制作
「Okinawan Wuman」は、2025年11月21日に発表されたAwichのアルバム。Wu-Tang ClanのRZAが全面プロデュースを手がけた。全13曲で、Joey Bada$$、Westside Gunn、FERG、Lupe Fiascoらが参加している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アルバム配信日 | 2025年11月21日 |
| プロデュース | RZA(Wu-Tang Clan) |
| 主な参加者 | Joey Bada$$、Westside Gunn、FERG、Lupe Fiasco |
| 先行曲 | Butcher Shop feat. FERG(2025年4月14日) |
| 先行曲 | Wax On Wax Off feat. FERG & Lupe Fiasco(2025年7月16日) |
| 日本版リミックス | Wax On Wax Off -Japan Remix-(2026年1月7日) |
| 日本版の参加者 | R-指定、NENE、鎮座DOPENESS、C.O.S.A. |
| 作品の配信権利表記 | ℗ 2025 and music |
19歳でアメリカへ渡り、英語のラップを学んできたAwichが、今度はアメリカのラッパーたちとアルバムを作る。英語を使うことだけでなく、誰と同じ作品を形にするかという点でも、活動の広がりが表れている。
題名には、沖縄の女性であることを置いた。海外での共演を重ねながらも、自分がどこで育ったかを作品名から消していない。さらに日本版リミックスでは国内のラッパーたちが参加し、同じ曲に別の言葉と表現を加えている。
「Partition」でメジャーデビューしたユニバーサル ミュージックの公式ページでは、Polydor Recordsのアーティストとして掲載されている。一方、「Okinawan Wuman」の配信ページにはand musicの権利表記がある。所属クルーのYENTOWN、作品ごとの配信表記、マネジメントは同じものではない。
CHAPTER 04 / SECTION 16Awichの社会への姿勢|Black Lives Matterと自分の経験
Black Lives Matterについて、Awichは、自分が関わるのは当然の問題だと語っている。アメリカで暮らし、家族を持った経験から、遠くで起きている出来事として切り離せないという姿勢である。
社会の問題を歌うときも、Awichは自分が経験し、考えたことから話す。AIとの「Not So Different」のリミックスでは、人と人の違いだけを見るのではなく、共通するものへ目を向ける。力強く言い切る曲と、対話しようとする言葉の両方がある。
これは本人がどんな立場から歌っているかを知る話でもある。家族への思い、沖縄への思い、国境を越えて音楽を作ることが、作品の外にある社会の話ともつながっている。
CHAPTER 05 / SECTION 17Awichについてよくある質問
家族については本人たちが公にした取材や作品の範囲を中心に紹介している。血液型、非公表の交際・私生活の情報は断定しない。MBTIも編集部の見解として区別している。
CHAPTER 05 / SECTION 18まとめ|家族と沖縄を、自分の言葉で歌うAwich
幼いころの怖さを詩に書き、2Pacの歌詞をノートで学び、アトランタで家族と暮らしたAwich。夫との別れを経て、自分が何を伝えられるのかを考え、YENTOWNの仲間と作品を形にしていった。
「Ashes」で描く母と娘、「Remember」で見せる仲間との時間、「Queendom」で言い切る自分の場所。別々の曲をたどると、同じ人が経験をどう言葉へ変えてきたかが見える。武道館、コーチェラ、RZAとの制作へ進んだ現在も、家族と沖縄は作品の近くにある。
- 沖縄県那覇市出身。本名は浦崎亜希子。9歳頃から詩を書き、2Pacの歌詞を読み込んだ。
- アトランタの短大を卒業し、結婚・出産を経験。2011年の夫との死別後は娘と沖縄へ戻った。
- YENTOWNへ自ら加入を求め、「8」「Queendom」などを発表。2025年にはRZAとの「Okinawan Wuman」を発表した。
「家族と沖縄を、自分の人生から歌い続ける」
Djtube 編集部 / 2026.10
