DELTA9KIDプロフィール
DELTA9KID(デルタナインキッド)は、1989年生まれ、埼玉県深谷市出身のラッパー。本名は廣井大輔で、49では「廣」名義で活動していた。中学時代からの親友BADSAIKUSHと舐達麻の作品を重ね、抒情的なリリックと、中性的で芯のある声を響かせてきた。「LOST BUBBLERS」「BUDS MONTAGE」「FUTURE」、2025年の「THE SEQUEL」など、三人の声が交わる作品にその持ち味が残る。G PLANTSが2026年にグループを離れたと語った現在と、3MCで録音した作品の時期は分けて見ていきたい。
CHAPTER 01DELTA9KIDのプロフィール|本名・生年・出身
本名は廣井大輔(ひろい だいすけ)。埼玉県深谷市に生まれ、熊谷を拠点とする舐達麻で活動してきた。BADSAIKUSH、G-PLANTSと並んで楽曲に参加し、取材では言葉数の少ない受け答えでも知られる。
BADSAIKUSHの低音やG-PLANTSの太い声に対し、DELTA9KIDは中性的で芯のある声を持つ。フックにもバースにも参加し、強い語気だけではない、抒情的な側面を舐達麻の曲へ持ち込んでいる。
1989年生まれのため、2026年10月時点では36〜37歳。正確な誕生日の月日は確認できていない。本名の表記は2021年の逮捕報道による。身長165cmは推定値で、本人・所属が公表した数値とは区別が必要だ。血液型の公表情報は確認できていない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 旧名義 | 廣(ヒロ)/49時代 |
| 活動の節目 | 2013年、出所後に舐達麻として本格始動 |
| 主な参加曲 | 「LOST BUBBLERS」「BUDS MONTAGE」「FUTURE」「THE SEQUEL」 |
| YouTube | APHRODITE GANG |
| @delta9kid | |
| X | 本人公式アカウントは未確認 |
| 音楽配信 | TuneCoreの舐達麻ページ |
| 公式ストア | AGH オンライン |

DELTA9KIDの名前の由来|廣からDELTA9KIDへ
名付け親はBADSAIKUSH。由来は、大麻の主成分の正式名称、delta-9-tetrahydrocannabinol(デルタナインテトラヒドロカンナビノール/THC)。「DELTA9」と「KID」(小さくてイケてる)を組み合わせた。THCはカンナビノイドの一種で、体内のカンナビノイド受容体に作用する物質として知られるが、健康効果をここから導くものではない。
BADSAIKUSHは、大麻を大量に生み出すイメージと、小さくて格好いい人物像からこの名を付けたという。
DELTA9KID自身は、この名を違和感なく自然に受け入れたという趣旨を話している。
BADSAIKUSHの「KUSH」、G-PLANTSの「PLANTS」、DELTA9KIDの「DELTA9」。三人の名義には大麻文化に結び付く語が並び、作品で繰り返す世界観ともつながっている。
49(フォーティーナイン)時代の名義は「廣」(ヒロ)。本名「廣井大輔」の「廣」一文字をそのまま使っていた。舐達麻として本格始動する時、BADSAIKUSHの命名で「DELTA9KID」に切り替わった。改名は、「舐達磨’s」から「舐達麻」へと活動が移っていく時期の出来事として語られている。
埼玉県熊谷市を拠点とし、BADSAIKUSH・G-PLANTS・DELTA9KIDの3MCによる作品で知られる日本語ラップクルー。前身は「舐達磨’s」で、2013年に現在の表記へ改めた。
舐達麻が自主運営するレーベル兼ブランドで、略称はAGH。作品のリリース、物販、YouTubeチャンネルの運営を自前で行う体制を指す。
CHAPTER 02DELTA9KIDの生い立ち・経歴|BADSAIKUSHとの出会いから舐達麻まで
DELTA9KIDは、埼玉県深谷市で父と母との3人家族で育った。両親は共働きで家を空けることが多く、外で過ごす時間が長かったという。中学1年のころにBADSAIKUSHと親しくなり、その関係が後の音楽活動へ続いていく。
BADSAIKUSHとの中学時代
中学1年で学校を休みがちになったDELTA9KIDは、同じように学校へ行かなくなったBADSAIKUSHと行動を共にするようになった。やがてBADSAIKUSHの家に住み着くほどの仲になり、本人がいない時間にも家族と食事をしていたという。
当時の取材では、原付で走り回り、地元のスーパーでカツアゲもしていた時期が語られている。中学ではラグビー部に所属していたが、学校より仲間と遊ぶ時間が増えていった。人に害を与えた行為を、単なる武勇伝として受け取るべきではない。
中学校の頃が一番楽しかったよね。今考えると。
この言葉と、BADSAIKUSHが語る実家での食事の話を重ねると、二人の親しさがステージより前の生活に根ざしていたことが分かる。
音楽を組むために出会った二人ではない。友人の家で日々を過ごす関係が、そのままクルーの土台になった。
高校進学とレゲエ・HIP-HOPとの出会い
高校はバダサイと同じ学校を受験。合格したのはDELTA9KIDだけだった。BADSAIKUSHは取材で、DELTA9KIDが全国大会に出場したラグビー部に所属していたことが合格につながったと説明している。
その後、BADSAIKUSHに一緒に別の高校を受けようと頼まれ、1つ上のG-PLANTSが通う学校を再受験した。二度目も合格して入学したが、入学式に顔を出した後は通わなくなった。二校への合格と高校中退の経験はあるが、二校とも入学して退学したという意味ではない。
10代後半でレゲエに傾倒し、18歳でHIP-HOPと出会う。キャデラックを買った先のアメ車屋の社長がHIP-HOPに詳しく、車内で流したいと思ったことがきっかけだったという。同時期に49(フォーティーナイン)を率いるNANCYと出会い、バダサイと共に49に所属。49にはG-PLANTS、D BUBBLES、後輩の故104も居た。後の舐達麻メンバーが、ここに揃う。
2009年|仲間を失った事故と4年の服役
2009年6月3日、金庫破りに関わる出来事と逃走中の事故で、後輩の1.0.4(とし)が亡くなった。BADSAIKUSHとDELTA9KIDの逮捕、DELTA9KIDが刑務所で4年を過ごしたことは、舐達麻の結成をたどる本人取材でも扱われている。
当時20歳と紹介されたDELTA9KIDは車を運転していた。深谷市榛沢付近を走行中に警察に追われ、事故の後に現場を離れたが、家族に付き添われて出頭したと伝えられている。BADSAIKUSHは現場で逮捕された。
この事故に重なる場面は、BADSAIKUSHの「FLOATIN’」にも残る。車がコンクリートへ衝突する描写や140kmという速度は、作品に刻まれた回想として読むべきもので、捜査記録による事故の再現とは分けたい。
本人取材が伝える収容期間は、BADSAIKUSHが少年院で1年、DELTA9KIDが刑務所で4年。その3年の差と、仲間を失った経験は、後の作品を読むうえで重要な背景になっている。
2013年|出所と舐達麻の本格始動
2013年、4年間の服役を経て出所。先に出所していたBADSAIKUSHとG-PLANTSが組んでいた「舐達磨’s」(なめだるまーず)に合流、ユニット名を「舐達麻」に改めて本格始動した。
2015年12月3日、1stアルバム「NORTHERNBLUE 1.0.4.」。タイトルの「1.0.4.」は故104への追悼だ。事故から6年半。バダサイの最初のアルバムにも、DELTA9KIDの最初のアルバムにも、後輩の名前が刻まれている。
2019年8月31日、2ndアルバム「GODBREATH BUDDHACESS」。iTunesヒップホップ・カテゴリで1位。自主的に作品を発表してきたクルーが、配信のヒップホップ部門でも注目を集めた。その後も逮捕報道やD BUBBLESの活動停止がありながら、BADSAIKUSH、G-PLANTS、DELTA9KIDによる作品が発表されていった。
CHAPTER 03DELTA9KIDのファッション・刺青・髪型・愛猫|私生活ディテール
柄の入ったアロハシャツにシンプルなボトムス、白山眼鏡のクラシックなフレーム、全身の和彫り。DELTA9KIDの服装は、一つひとつの品を目立たせながら、全体では落ち着いた印象にまとまっている。
DELTA9KIDの愛用ブランド
- APHRODITE GANG / BUDSPOOL|自身のクルー発のブランド
- WACKO MARIA|ラッパー御用達のアロハシャツブランド
- THE BLACK EYE PATCH|東京発・コラボ展開も多数
- F-LAGSTUF-F|ストリートブランド
- GAKKIN(花罰)|彫師GAKKINのアパレルライン
- VANS|スニーカー
- Supreme|定番ストリート
愛用する服の一つが、元Jリーガー・森敦彦がプロデュースするWACKO MARIAのアロハ。バダサイや阿修羅MIC、ラッパー界隈で人気のブランドで、3MCで活動していた時期の舐達麻でも定番となっていた。彫師GAKKINが手掛ける「花罰」(FLOWER PUNISHMENT)のロゴアパレルでは、DELTA9KIDがファッションモデルも務めている。
DELTA9KIDのメガネ|白山眼鏡 LINDY ARM
DELTA9KIDのトレードマークの一つが、白山眼鏡(はくさんめがね)の「LINDY ARM」というシリーズの眼鏡。1883年に人形町で創業した白山眼鏡店をルーツとし、1946年に上野で店を始めた老舗である。過剰にデザインしないことを重視し、日常に溶け込む眼鏡を作り続けている。
DELTA9KIDの髪型|スキンフェード × サイドパート
髪型は綺麗に刈り込まれたスキンフェードに、サイドパート(横分け)を組み合わせたスタイル。すっきりした輪郭と横分けの組み合わせが、眼鏡やシャツの着こなしにもなじんでいる。バーバーはMR.BROTHERS CUT CLUBのKENSHI(@kenshi098)が担当している。
DELTA9KIDの刺青|全身和彫りと「麻」の文字
- 首|猫
- 右胸|龍
- 左胸|虎
- 背中|武松虎退治
- 腕|鯉
- 右手の甲|青蛙神(カエル)
- 左手の甲|琉金(金魚)
- 手首・足首|BADSAIKUSHが彫った「麻」の文字
和彫りは中学卒業直後から始まり、その後も彫り足してきた。彫師は新潟・Silk Needle TattooのTOMOが主担当。背中の大きな絵柄は、水滸伝で武松が素手で虎を退治する逸話にちなむ「武松虎退治」だ。
そして、手首と足首の「麻」。これは2020年にBADSAIKUSHが直接彫り入れたものだ。タトゥーアーティストではない、ラッパーの友人が彫った針の跡が、いまも彼の身体に残っている。
専門の彫師による大きな絵柄と、長年の友人が彫った一文字。技法の違いだけでなく、誰に彫ってもらったかという関係まで、DELTA9KIDの刺青には残っている。
DELTA9KIDの愛猫
DELTA9KIDは猫を飼い、Instagramでも愛猫の姿を発信してきた。BADSAIKUSHの愛猫にはコラットのリュウ、ベンガルのzerryがいて、G-PLANTSも猫を飼っている。3MCで活動していた三人に共通する、音楽とは別の日常だ。
DELTA9KIDの行きつけのお店|熊谷Q-CHANG CURRY
舐達麻の活動拠点・埼玉県熊谷市に、メンバーがよく口にする店がある。スパイスから本格的に作るカレー店「Q-CHANG CURRY」(キューチャンカレー)。熊谷駅から徒歩圏内、人気店だ。
Q-CHANG CURRYでのおすすめとして、DELTA9KIDは肉抜きの麻婆丼を挙げている。
カレー店で挙げるのが麻婆丼で、しかも肉抜きという注文。その具体性に、普段から通う店での好みが表れている。
短い受け答えの中にも、本人の日常が見える。ただし、一皿の注文だけで普段の食生活全体や菜食主義を決めつけることはできない。
DELTA9KIDの結婚・彼女・子供に関する情報
結婚・彼女・子供について、本人による公表情報は見つかっていない。音楽や友人との写真に比べ、恋愛や家庭の話は表に出していない。
2022年10月にBADSAIKUSH、G-PLANTSと女性2人の逮捕が報じられた件は、DELTA9KID本人の事案ではない。報道に出た女性を、それぞれの交際相手だと断定したり、その情報からDELTA9KIDの結婚や交際を推測したりすることはできない。
CHAPTER 04DELTA9KIDのMBTIと人物像|INFPという見解
編集部は、DELTA9KIDの作品と公開発言からINFPに近い傾向を読む。本人が公表した診断結果ではなく、表現の仕方を整理するための仮説である。
| 具体的な言動・表現 | 編集部の読み方 | 限界 |
|---|---|---|
| 実体験と自分の実感からリリックを作ると話す | 外の評価より内側で納得できる感覚を起点にする | 制作上の姿勢であり、私生活全体の診断ではない |
| 「LOST BUBBLERS」で不在の仲間と今を生きる人を対比する | 日常の景色に、喪失や関係の意味を重ねる | 歌詞の表現と書き手の性格は同じではない |
| BADSAIKUSHとの関係を家族と表す | 長い時間で育った関係を、実感のある言葉で捉える | 親しい友人がいることだけでタイプは決まらない |
| 静かな声でフックやラインを置く | 感情を強く押し出さず、情景に託す表現として読む | 声質や演出を内向性の証明にはしない |
煙、木漏れ日、後輩の名前を並べるリリックや、仲間との関係を重く置く語り方を、編集部は内面の価値観を大事にする傾向として捉えている。長く作品に参加し続けてきたことも人物像の一部だが、継続年数だけでINFPと判定することはできない。
Q-CHANG CURRYで具体的な好みを挙げる受け答えも本人らしい一面だ。ただ、肉抜きの麻婆丼という注文は好みの話であって、MBTIの判定材料として強いものではない。
ISFPとも読める、実感を大事にする姿勢
日々の具体物や、手触りのある経験を出発点にする姿勢を重く見れば、ISFPという解釈もできる。INFPと読むのは、そうした経験を象徴や関係の言葉へ変えていく作品表現を重視した場合だ。本人の回答を用いた心理検査ではなく、A/Tの細分類まで判断できる材料もない。
INFPは本人公表ではない編集部推定。寡黙さ、外見、食の好み、逮捕歴からタイプを決めるのではなく、実際に語った制作姿勢と作品の表現を材料にしている。
CHAPTER 05DELTA9KIDの盟友・交流関係|BADSAIKUSH・阿修羅MIC・孫GONG
DELTA9KIDの交友の中心にあるのは、中学からの付き合いであるBADSAIKUSHとの関係である。メディア露出は少ないが、InstagramやSNSの投稿からシーン内での交流が確認できる。
- BADSAIKUSH|中学からの親友。「家族」と呼び合う関係
- G-PLANTS|3MC時代の最年長MC。2026年にソロ活動へ
- 孫GONG|ジャパニーズマゲニーズ・盟友クルー
- TAKABO|ストーナーラッパー仲間
- 阿修羅MIC|舐達麻周辺の仲裁役
- JNKMN|ストーナーラッパー仲間
- 漢a.k.a. GAMI|2021年逮捕時に擁護コメントを発信
DELTA9KID × BADSAIKUSH|兄弟同然の絆
DELTA9KIDはBADSAIKUSHとの関係を、家族という言葉で表している。
中学時代、暴走族時代、49時代、金庫破り事件、服役、出所、舐達麻結成。20年以上、同じ船に乗っている。SNSにはおそろいのロレックスを身につけたツーショットが上がるし、2020年にはバダサイがDELTA9KIDの手首と足首に「麻」の一文字を自分で彫り入れた。タトゥーアーティストではない人間が彫った和彫りが、いまも彼の身体に残っている。
中学時代の食卓から音楽活動まで、関係が生活の延長にあることが伝わってくる。
DELTA9KID × 阿修羅MIC
阿修羅MICとは楽曲で共演し、SNSでも一緒の姿を見せてきた。阿修羅MICの「365DAYS」にはBADSAIKUSHとDELTA9KIDが客演しており、舐達麻以外の名義で二人の声を聴ける。舐達麻周辺で仲裁役として語られることもあり、2023年のYZERR/BAD HOPとの対立でも、関係者として名前が挙がった。
仲裁という役割をどう受け止めるかは、対立のどちら側から見るかでも変わる。ただし、DELTA9KIDとの関係を知るうえでは、評価の応酬だけでなく、実際の共演曲と長く続く交流に目を向けたい。

CHAPTER 06DELTA9KIDの現在|「THE SEQUEL」とグループの変化
2026年10月19日時点で確認した舐達麻/NAMEDARUMAAZの公式配信カタログでは、2025年6月1日配信の「THE SEQUEL」が最新リリース欄に掲載されている。DELTA9KID個人のソロ曲ではなく、BADSAIKUSH、DELTA9KID、G-PLANTSが参加した舐達麻名義の作品だ。
同日には、配信停止となっていた2ndアルバムが「GODBREATH BUDDHACESS (THE RE-UP EDITION)」として再配信された。「THE SEQUEL」はGREEN ASSASSIN DOLLARと7SEEDSが制作に参加し、2023年12月以来およそ1年半ぶりの新曲として発表された。再配信盤と新曲は、同じ時期の動きでも分けて捉える必要がある。
G PLANTSのソロ始動と、3MC時代の作品
G PLANTSは2026年8月14日公開のRolling Stone Japanの本人インタビューで、舐達麻を離れたことと、ソロでの制作について語った。グループとの関係の詳細は今後の作品や活動で伝えるという説明であり、DELTA9KID本人の脱退を告げた発言ではない。
「BUDS MONTAGE」や「THE SEQUEL」に三人の名前が並ぶことと、現在も同じ体制で活動していることは同義ではない。過去の録音にある役割は残しつつ、現在の動きと混同しないようにしたい。
アワードとテレビで見せた姿
2023年には、TuneCore Japanの10周年アワード「Independent Artist Awards by TuneCore Japan」で、過去10年間の再生を対象とする「Hero of the Decade」に舐達麻がノミネートされた。フジテレビの音楽番組「M_IND」にはBADSAIKUSHとともに出演し、ライブを披露している。寡黙な受け答えとは別に、テレビでマイクを持つ姿も見せてきた。
2023年12月、舐達麻がライブを行っていた渋谷のクラブで起きた騒動について、2024年12月には第三者らが建造物侵入などの疑いで逮捕されたと報じられた。これはDELTA9KID本人の逮捕や処分を伝えたものではなく、有罪判決とも区別する必要がある。
CHAPTER 07DELTA9KIDのラップスタイルと代表曲
DELTA9KIDのラップで一番強いのは、声を張らないことだ。BADSAIKUSHのカリスマ的な低音や、G-PLANTSの野太い咆哮の隣で、彼は淡々とラインを置いていく。中性的で芯のある声質は、舐達麻という荒々しい音像のなかで逃げ場として機能している。
煙、木漏れ日、刑務所、メリージェーン、後輩の名前。生活にある具体物と、そこに結び付いた感情を同じ流れに並べていく。強い語気だけで押すのではなく、リリックの行間に景色を残す書き方だ。
自分が確かにそう思う、という感覚があって
DELTA9KIDはこの取材で、実体験を出発点に、自分の実感からリリックができると説明した。また、過去の自分に向けて書く言葉がある一方、人に幸せを与えられる存在でありたいとも話している。聴き手への応援に聞こえる歌詞も、自分自身への言葉から生まれるということだ。
舐達麻「THE SEQUEL」|夢の続きを歌う
2025年6月1日配信の舐達麻シングル。BADSAIKUSH、DELTA9KID、G-PLANTSが作詞、GREEN ASSASSIN DOLLARと7SEEDSが作曲として名を連ねる。同日配信の「GODBREATH BUDDHACESS (THE RE-UP EDITION)」にも収録されており、掲載した動画はMVではなく、シングル版の公式配信音源である。
「続き」という語は、覚めない夢を終わった回想ではなく現在から先へ伸びる時間として置く。三人の共同曲の言葉であり、DELTA9KID個人の実人生や個別パートを示すものではない。
- 情景や言葉の余韻を追いたい人
- 力まず置くフックを聴きたい人
- 仲間や不在の相手への言葉に関心がある人
- 細かい譜割りと速い手数を最優先する人
- サビで一気に盛り上がる展開だけを求める人
入門ガイド|声の違いが見える3曲
最初は「BUDS MONTAGE」でフックの声をつかみ、「LOST BUBBLERS」の陰影、「FUTURE」の場面の重ね方へ進むと聴き比べやすい。2025年の「THE SEQUEL」は、その後の三人の共同曲としてあわせて聴きたい。
| 曲名 | 発表 | 担当 | 聴きどころ | こんな人向け | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 「BUDS MONTAGE」 | 2020 | フック | 動詞を起点に置いていく歌い方 | まず声質を知りたい | まず聴く |
| 「LOST BUBBLERS」 | 2019 | フック | 不在を扱うときの温度の下げ方 | リリックの陰影を追いたい | 次に聴く |
| 「FUTURE」 | 2018年MV/2019年配信 | バース | 時間と場所を行き来する構成 | 獄中体験の反映を知りたい | 次に聴く |
向いていないリスナー|手数と勢いを求める人との相性
正直に書くと、DELTA9KIDは分かりやすい聴きどころを作らないMCだ。譜割りを細かく刻む手数型のフロウを求める人、サビで一気に上がる展開を期待する人には、まず物足りない。
彼の役割は前に出ることではなく、曲の温度を一段下げて全体を支えることにある。舐達麻を初めて聴く人がBADSAIKUSHのバースに耳を持っていかれるのは自然で、DELTA9KIDの良さは2周目以降に効いてくるタイプだ。
「LOST BUBBLERS」|不在と今をつなぐフック
活動から姿を消したD BUBBLESを想って書かれたとされる楽曲で、DELTA9KIDがフックを担当する。煙と陽光、過去と現在、不在と継続。彼の中性的な声でこのフックが流れた瞬間、楽曲全体の温度が一段下がる。
煙と木漏れ日の中で、時計から離れて笑みがこぼれる情景が、戻せない過去へとつながる。引用した「今を生きてる奴」は、失った相手を思う時間から、いま隣にいる仲間へ視線を戻す言葉だ。狼煙には追悼だけでなく、現在の関係を確かめる動きも読める。
「BUDS MONTAGE」|フックの声と、G PLANTSが語った制作
2020年7月30日配信の、舐達麻を代表する一曲。DELTA9KIDが歌うシンプルで力強いフックが楽曲を支える。動詞を起点に、言葉を畳みかけすぎず置いていく歌い方が印象に残る。
G PLANTSは2026年の本人取材で、このフックを複数案から作り、歌うメンバーに合わせてフロウを直したと説明している。DELTA9KIDが歌うことと、フックの制作を誰が担ったかは別の話だ。曲の作詞クレジットにも三人の名前が並んでいる。
「降ろす」という下向きの動詞から、生活を上向かせて仲間と頂きを目指す流れへ移る。災いや偽り、効かない偽物を拒み、背中を押す力へつなぐ対比が、短いフックに推進力を作っている。DELTA9KIDの声は、その上下の動きを力まず運ぶ。
「FUTURE」|場所が変わっても切れない縁
2018年6月7日に公式YouTubeで公開された楽曲。2019年4月13日には配信シングルとしてリリースされた。バースでは裁判へ向かう場面と、大麻文化を示す4時20分という記号が重なり、時間と場所を行き来する。
「FUTURE」では、裁判へ向かう時刻、切れない縁、夢の中でも会いたい相手を並べる。具体的な場面を重ね、距離があっても変わらない関係を置くバースとして紹介されている。
「どこにいても」という場所の変化を認めた上で、「変わらない」と続ける。直前に大麻を人の名で呼ぶメリージェーンが登場する流れでは、「唯一無二」は特定の恋人に限らず、離れても切れない対象との縁を強調する言葉として読める。
結局、DELTA9KIDがやっているのは、刑務所や出廷、煙にまつわる場面を同じ言葉の流れに並べることだ。
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CHAPTER 08DELTA9KIDの逮捕歴|2009・2018・2021の整理
DELTA9KIDの経歴では、2009年、2018年、2021年の三つの事案が取り上げられてきた。2009年の事故後の服役と、2018年・2021年の大麻所持をめぐる逮捕は、それぞれ別の出来事だ。逮捕されたこと、実際に服役したこと、その後の処分は分けて読む必要がある。
2009年6月3日|金庫破り後の事故と4年間の服役
2009年の金庫破り後の事故は、後輩1.0.4の死と、自身の4年間の服役につながった。出所後、DELTA9KIDは舐達麻として音楽に本格的に取り組むようになる。
結成期をたどる本人取材が伝えるのは、刑務所で過ごした4年間である。判決の罪名や年次の細部、収容中の居室までを一つの説明として確定することはできない。
本人が話した刑務所の食事|善哉の記憶
ニートtokyoで刑務所の食事を聞かれ、DELTA9KIDが挙げたのが善哉(ぜんざい)だった。配食工場で作る側にいた時期に、鍋から盗み食いしていたという。見つかれば懲罰を受けると分かりながら、人に見られない時間に砂糖を多めに入れて食べた、と当時の味を振り返っている。
後輩を失った事件と服役の話に、配食工場での善哉の記憶が重なる。大きな転機の中にも、食べ物の味という生活の細部が残っている。
2018年|大麻取締法違反で逮捕
2018年には、D BUBBLES、BADSAIKUSHとともに、大麻所持をめぐって逮捕されたと伝えられている。実刑判決を受けたと報じられたのはD BUBBLESのみで、DELTA9KIDとBADSAIKUSHについては実刑には至らなかったとされる。両名の処分の内訳は本記事では確認できていない。
D BUBBLESは服役後、公の活動から姿を見せなくなったとされる。その後に三人の声で作品が発表されていった経緯と、2026年のG PLANTSのソロ始動は、別の時期の変化として捉えたい。
2021年4月14日|大麻所持容疑で逮捕、後に釈放
2021年4月、G-PLANTSとともに大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕されたと報じられた。音楽ナタリーの報道によれば、DELTA9KID(廣井大輔容疑者)の容疑は2020年9月に大麻を所持していた疑い。日刊スポーツの報道では、熊谷市内のビルで大麻片約0.01グラムを所持していた疑いと伝えられた。
報じられた所持量は約0.01グラムで、SNSではその少なさに驚く声も上がった。ただし、量の大小だけで捜査や処分の結論を判断することはできない。
漢a.k.a. GAMIは2021年の報道後、所持量の少なさに触れ、見せしめのような逮捕だと批判し、DELTA9KIDは大丈夫だろうとの見方を配信で示した。これは漢の見解であり、起訴・不起訴などの処分を示すものではない。
2021年5月6日にはBADSAIKUSHとの2ショットがInstagramに投稿され、ファンのあいだで釈放が伝わった。投稿された日と、実際に釈放された日は区別する必要がある。釈放日および起訴・不起訴などの処分の詳細は、公表情報を確認できていない。
CHAPTER 09DELTA9KIDに関するよくある質問
CHAPTER 10DELTA9KIDのまとめ|舐達麻に残してきた声
強い声や派手なフロウが最初に耳を引く中で、DELTA9KIDの良さは、曲を聴き返すほど輪郭が見えてくる。言葉を詰め込まずに置く声が、舐達麻の音に別の奥行きを作ってきた。
BADSAIKUSHやG-PLANTSの声と交わる場面で、淡々と置かれるDELTA9KIDのフックは曲の景色を支えている。歌う人、書く人、仲間として過ごしてきた人。その役割を分けて聴くと、三人の作品の見え方も変わる。
20歳のころの事件と4年間の服役、出所後の10年以上の音楽活動。全身の和彫りには、BADSAIKUSHが彫った「麻」の文字もある。一方で、肉抜きの麻婆丼を好み、Instagramには猫の姿を載せる。大きな出来事と小さな日常の両方を知ることが、このMCの言葉を聴く手がかりになる。
寡黙さは、語ることがないという意味ではない。友人との食卓、帰れない過去、いま生きる仲間。DELTA9KIDの声を追うと、同じ曲の中にも、それまで聞き逃していた生活の細部が見えてくる。

「静かな声が、景色を残していく」
Djtube 編集部 / 2026.10
