RYKEYDADDY DIRTY
RYKEY(リッキー)は、東京都八王子市出身のラッパー。1987年12月12日生まれで、日本人の父とケニア人の母を持つ。JIGGと制作を重ね、2015年の「Pretty Jones」でデビューした。RYKEY DADDY DIRTY、RYKEYDADDY.Xの名義でも作品を発表し、2026年にはMasato HayashiやSEEDA、孫GONGとの共同曲に参加。生い立ちを刻む言葉と、家族や身近な人へ向けるメロディアスなフックが持ち味だ。
RYKEYのプロフィール
RYKEY DADDY DIRTYは、本名・下田ムトアリツキー、1987年12月12日生まれの38歳。東京都八王子市出身のラッパーである。日本人の父とケニア人の母のもとに生まれ、2015年のアルバム「Pretty Jones」でデビューした。
RYKEY、RYKEY DADDY DIRTY、RYKEYDADDY.Xは、いずれも作品に使われている名義だ。表記だけで別人と判断せず、発表年と作品を合わせて見ると歩みを追いやすい。
デビュー作と改名後の作品を知るために、名義と音楽用語を押さえておこう。
東京都八王子市出身のラッパーが、2021年の出所後から使ってきた名義である。服役前は「RYKEY」名義で活動しており、出所後にRYKEY DADDY DIRTYへ改めた。
2015年6月3日に発売された1stアルバムである。生い立ちと実体験を直接的に扱うリリックで、無名の新人として登場しながら注目を集めた。
客演とは、他のアーティストの楽曲にゲストとして参加することである。フィーチャリングとも呼ばれ、シーン内での関係や評価がそのまま形になる。
名義の変遷|RYKEYからRYKEY DADDY DIRTYへ
先輩方に名前をつけていただいた
本当に先輩方が昔から怖かった
そんな先輩方が
俺にこう言った
生きてる間には沢山思い出を作り
いつか死ぬその時はきっちりと
歴史を残さないといけないと
もうRYKEYDADDYDIRTYは
沢山思い出作っただろ
もう死ぬぞ
お前はもうKINGなんだから
RYKEYKINGDIRTYでいいよ— RYKEYDADDYDIRTY (@licky6329461) November 30, 2022
2019年の件で服役し、2021年の出所後に「RYKEY」から「RYKEY DADDY DIRTY」へ改めている。
2022年11月30日には、敬愛する先輩方から「お前はもうKINGなんだから」と言われたことを受けて、「RYKEYKINGDIRTY」への改名をSNSで宣言した。しかし数日後には撤回し、これからもRYKEY DADDY DIRTYで生きていくことを発表している。理由も本人が説明している。
母親から叱られたことが、元の名前に戻す理由だったと説明している。
その後はSNSでの発信を控え、「人間探しにいく」と投稿している。
RYKEYの生い立ち
RYKEYがラップを志すきっかけは、17歳のころに八王子のクラブで見た先輩のライブだった。そこからデビューまでには約10年かかっている。
クラブで刺激を受けた10代、JIGGとの出会い、27歳でのアルバムデビュー。リリースに至るまでには、地元の仲間内から東京の音楽シーンへ踏み出す時間があった。
活動に空白が生じた時期もあるが、録音済みの作品が後に届けられた例もある。作品の発売日と、その時点での本人の生活状況は同じものではない。
幼少期から中学時代|八王子で過ごした10代
東京都八王子市で生まれ育った。当時はハーフという存在が今ほど一般的ではなく、容姿や髪型をからかわれることもあったが、本人はあまり気にしていなかったと語っている。
周囲と違う容姿を、むしろ自分の格好よさとして受け止めていたという。
中学時代は野球部でピッチャーを務める一方、地元のギャング集団「八王子クリップス」の一員となり、毎晩家を抜け出して遊び回る生活も送っていたと本人が語っている。周囲にHIP HOPを聴く人が多く、音楽に自然と触れる環境でもあった。
当時の自分を、HIP HOPが好きで、やんちゃな子どもだったと振り返っている。
17歳の転機|先輩のライブを見た夜
決定的だったのは17歳のとき。八王子のクラブイベントで先輩のライブを見ている最中に、自分でもやれると感じたという。
Manhattan Recordingsのプロフィールでも、先輩のライブに刺激されてラップを始めた経緯が紹介されている。観客として憧れるだけでなく、自分もステージに立つ側へ回ろうとした。
19歳からリリックを書き始め、2008年にプロデューサーのJIGGと出会って制作を本格化させた。なお、子どもの頃から姉の影響でHIP HOPのトラックに替え歌を乗せて歌っていた、というエピソードも語られている。
学歴と学生時代
学校の教育を疑うぜ
てめぇがはねれてねぇのに
生徒はダメらしいな pic.twitter.com/hkk4Yg54LH— RYKEY_923 (@licky6329461) July 16, 2020
学校名や卒業・進学の経歴は確認できていない。中学時代に野球部でピッチャーを務めた話はあるが、ラップを始めた年齢から進学先を決めつけることはできない。
HIP HOPという生き様|本人の言葉から
本人はHIP HOPを、音楽ジャンルというより人生そのものとして捉えてきたと語っている。ブリンブリンのネックレスを身に着け、アメ車を乗り回して仲間と遊ぶ往年のラッパーたちの姿に、HIP HOPの真髄を見ていたという。
だからこそ、自らその「ハードな人生」に飛び込んでいった。薬の売人をしたことも、喧嘩を重ねたことも、本人はその延長として語っている。社会とはかけ離れた自分にはHIP HOPしかない、という確信がその根にあった。
「東大卒業しました」というアルバムより、「刑務所から出てきました」っていうアルバムのほうがHIP HOPだと勝手に思っちゃったから。
RYKEY / MZEE RECORDS「my name is」
どうしようもない奴らでも、どうにかなって生きていけるような職業。
RYKEY / MZEE RECORDS「my name is」
この言葉が示すのは、行き場のなさを抱えた自分にとって、ラップが生業になり得たという実感だ。過去の事件を作品の評価に置き換えることとは分けて受け止めたい。
RYKEYの家族・タトゥー・ファッション
RYKEY DADDY DIRTYの私生活で繰り返し出てくるのが、家族とルーツという2つの主題だ。タトゥーのモチーフにも、リリックにも、この2つが刻まれている。
結婚・子ども|事実婚とその解消
タレントの紅蘭と事実婚の関係にあり、2018年12月に第一子が誕生している。2019年7月に関係の解消が双方から発表された。
紅蘭が娘を育ててきた一方、RYKEYと娘が会う様子も過去のSNSに投稿されている。関係解消後の交流を示すものだが、それだけで現在の生活や親権の法的な取り決めまでは分からない。
タトゥー|ルーツと転機を刻む
公開されている写真や本人の発言から、位置とモチーフが確認できているタトゥーを部位別に並べたのが次の表である。由来が語られている箇所は備考に併記している。
| 部位 | モチーフ | 備考 |
|---|---|---|
| 腹部 | 「KAMBA」の文字 | 母のルーツに連なる語とされる |
| 左腕 | クロス・プレイハンド・ケニアの革命家像 | 16歳で最初に彫った箇所を含む |
| 右腕 | 「SMR」の文字 | |
| 右胸 | 方位磁針 | |
| 左胸 | 「NEVER BACK DOWN」の文字 |
母のルーツに連なる「KAMBA」や、左胸の「NEVER BACK DOWN」には、出自や信条を体に残す意識がうかがえる。すべての図柄に同じ意味があると決めつけず、本人が語った由来と分けて見たい。
最初に彫ったのは16歳のとき。知り合いの先輩の彫師に、左腕のクロスとプレイハンドを入れてもらったという。
16の時にいれた年が年だから、彫師の名前は伏せときます 笑
RYKEY / TATOO NAVI インタビュー告知
その後は交際相手の兄が東京都福生市の彫師だったことから、徐々に増やしていった。母の故郷であるケニアでも彫っている。
本人は、人生の節目や人との出会いをタトゥーに残していると説明している。
ファッション|BULLISHとのコラボ
- BULLISH
- CONVERSE
- FUBU
- HUF
- APHRODITE GANG HOLDINGS
- RAIDERS
シンプルな組み合わせで存在感を出すスタイルが基本だ。ストリートからモダンなものまで振れ幅が広い。
ストリートブランドBULLISHとはコラボ商品も発売している。なかでも「オーバーサイズアラン編みニット」は、ダボっとしたシルエットに編み目の模様が入ったアイテムで、本人はブラックを愛用している。
歯へのこだわり
歯が汚ねぇ奴は
信用するな
約束だぜ— RYKEY_923 (@licky6329461) June 7, 2020
歯のケアに強いこだわりを持っており、インスタライブで歯間ブラシを使う様子を配信することもある。純金の歯にしている様子もSNSに投稿されている。
RYKEYのMBTIはESFP?編集部の見解
Djtube編集部は、RYKEYのMBTIをESFP(エンターテイナー型)と推定している。本人が公表した診断結果ではない。先輩のライブを見てラップに踏み出したことや、母の言葉を制作方法に取り入れたことから、目の前の刺激と身近な関係を行動へつなげる人物像として読んだものだ。
| 観察された言動 | 対応する傾向 | 出典の性質 |
|---|---|---|
| 先輩のライブを見た場で「俺にもやれる」と即断してラップを始めた | その場の刺激から行動を決める外向的感覚(Se) | 本人のインタビュー発言 |
| 「リアルかどうか」を判断の軸に置き、作られた表現を退ける | 内的な価値基準を優先する内向的感情(Fi) | 本人のインタビュー発言 |
| ライブで感情を前面に出す一方、家族との時間も歌にする | 場面の実感を表現へつなぐ傾向として読む | 公の音楽活動・作品 |
| 母親の一言でリリックの書き方を変えた | 身近な人間関係が判断に強く影響する | 本人のインタビュー発言 |
ただし、これは公に語られたエピソードからの見立てにすぎない。舞台上の表現を日常の性格と同一視したり、事件の理由をタイプで説明したりするものではない。
対立仮説|ISFPとも読める理由
ISFP(冒険家型)とも読める。リリックの内容は内省的で感傷を含むものが多く、作品の側だけを見るとこちらのほうが自然に映るためだ。本記事では、公の場での振る舞いと、その場で判断して動く行動の型を重く見てESFPを第一の推定とした。どちらを重視するかで判定が割れるため、確定的なものではない。
RYKEYの活動歴と共演者
2015年に1st Album「Pretty Jones」をリリースし、そのわずか5か月後に2nd Album「AMON KATONA」を発表している。
ヒップホップをチャラさから解放しなきゃいけない。
RYKEY / CDJournal インタビュー(2015年)
「AMON KATONA」では、流行に合わせるより、自分が手本だと思えるラップを示したかったと話している。分かりやすい物語を意識した「Pretty Jones」と、抽象的な言葉を使う2作目は、同じ経験から異なる表現を引き出した作品だ。
2018年に「MZEE」、2020年に「Beef & Chicken」。服役前に録音された音源集「DEMO TAPE」は2020年9月に配信され、CDは2021年1月に発売された。BADSAIKUSH・DELTA9KID・仏師・REAL-Tらが客演に参加している。



2015年には冠ラジオ番組「RYKEYと愉快な言葉達」も始まり、翌年はSIMONの「Eyes」にIOと参加。漢 a.k.a. GAMIとの番組など、音源以外にも活動が広がった。
RYKEYの現在と2025〜2026年の作品
2024年8月には、国立代々木競技場第一体育館の「BATTLE SUMMIT II」に出場。1回戦でOZworldと対戦し、判定で敗退した。
2025年の配信では、RYKEYDADDY.X名義が用いられている。4月18日に「All Waiting For Me」、6月3日に18曲入りの「FREEDOM or JAIL」が配信された。
「All Waiting For Me」はMZEE RECORDSの公式YouTubeでも公開され、作品のクレジットにはBradley Moonらが記されている。MZEE RECORDSが公式映像を公開し、作品の権利表記にも名を連ねている。
一方、RYKEY名義でも2025年8月9日に「LAST TIME」、8月22日にDJ RYOWプロデュースの「sacrifice」を発表している。RYKEYDADDY.Xだけが唯一の活動名義というわけではない。
- ALBUM「Mother Jane」 / RYKEYDADDYDIRTY
- SINGLE「All Waiting For Me」 / RYKEYDADDY.X
- ALBUM「FREEDOM or JAIL」 / RYKEYDADDY.X
- SINGLE「LAST TIME」 / RYKEY
- SINGLE「sacrifice」 / RYKEY
2026年にはEI8HT & MASH-Iの「M.I.C.」に参加し、8月に孫GONGとの「底無し沼に華」、9月にはMasato Hayashiの「Iconic」にSEEDAとともに参加した。名義の変化は、作品ごとのクレジットをたどると分かりやすい。
2024年9月には暴行の疑いで逮捕と報じられた。同年12月には建造物侵入と暴行の疑いでも逮捕が報じられた。各件の後続処分や現在の身柄状況は確認できていない。
RYKEYのラップスタイルと制作姿勢
RYKEY DADDY DIRTYのラップは、情緒的なトラックの上に実体験由来の荒いトピックを乗せる、という組み合わせで成り立っている。フックがメロディアスな一方、リリックの内容は生々しい。この落差が持ち味だ。
- 生い立ちをもとにした実体験由来のリリック
- メロディアスでドラマチックなフックとフロウ
- 情緒的なサウンドと荒いトピックの落差
リリック制作|紙とペンで書く理由
リリックは携帯電話のメモではなく、紙とペンで書いている。きっかけは母親の一言だったという。
自分の大事な歌なんだから、ノートとペンじゃないの?
RYKEY / HIP HOP DNA インタビュー(母の言葉を本人が紹介)
深いな、と思った。
RYKEY / HIP HOP DNA インタビュー
歌を大事に扱う姿勢を、言葉だけでなく書く道具にも表した。身近な人の一言が制作の習慣を変えたエピソードである。
代表曲「Baby」|MVで話題になった一曲
2015年5月発表の「Baby」が代表曲にあたる。「ホンネ」に続く2枚目のシングルで、恋愛の心の揺れを描いた楽曲だ。MVはHavit Art Studioが手がけ、恋人役として紅蘭が出演したことでも話題になった。
愛の言葉に夢中になる気持ちと、これ以上傷つけ合いたくない思いが同じ曲にある。「I love you」を幸福の結論にせず、相手への執着や迷いも含む言葉として置いている。
向いていないリスナー|内容面でクリーンな作品を求める人との相性
正直に書くと、RYKEY DADDY DIRTYは万人に勧められるラッパーではない。リリックには犯罪や薬物に触れる記述もあり、生い立ちと結びつく生々しさがある。すべての歌詞を実際に起きた出来事と受け取るのではなく、物語として組み立てられた面も含めて聴きたい。内容面でクリーンな作品を求める人には合わない。
また、人物と作品を切り離して聴けるかどうかも人によって分かれる。報道された事件を踏まえて距離を取る判断も、それはそれで妥当だ。家族への思いや制作への姿勢が伝わる曲がある一方、題材や言葉の強さを負担に感じる人もいる。
- メロディアスなフックと生々しい内容の落差を面白がれる人
- 実体験由来のリリックを聴きたい人
- 日本語ラップのストリート系の系譜を追いたい人
- 内容面でクリーンな作品を求める人
- 人物の言動と作品を切り離して聴くのが難しい人
- 明るく前向きな曲を探している人
RYKEYのおすすめ楽曲と歌詞
入門なら「ALL GODS BLESS ME」から入り、時代をさかのぼって「ホンネ」へ進む順番が分かりやすい。後掲の比較表に挙げた代表曲4曲を並べると、同じ主題の扱い方が年代で変わっているのが見える。
代表曲を、発表年・収録作・聴きどころで比べると、家族への感情と自分の評判への向き合い方が見えてくる。
紙とペンと俺とお前|Masato Hayashi、SEEDA、RYKEYの共同曲
「紙とペンと俺とお前」は、Masato Hayashiの2026年9月2日発売アルバム「Iconic」収録の共同曲。Masato Hayashi、SEEDA、RYKEYが作詞・作曲・ラップに名を連ね、YouTubeではMasato Hayashi提供の自動生成公式全曲音源が9月1日に公開された。
底無し沼に華|孫GONGとRYKEYの2026年共同曲
「底無し沼に華」は、孫GONGとRYKEYがMasato Hayashiを迎えた2026年8月26日配信曲。公式MVでは孫GONG、Masato Hayashi、RYKEYの作詞とTEAM2MVCHのプロデュースが示されている。
「沼」と「華」を並べ、抜け出しにくい現実のなかにも咲こうとする意志を置く。RYKEYだけの個別パートではなく、三者が作詞する共同曲全体の短句として読む。
| 曲名 | 発表 | 収録作 | 聴きどころ | こんな人向け | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| ALL GODS BLESS ME | 2022 | 「RYKEYDADDYDIRTY」 | 他者と自分の幸福を願うフック | 現在地から入りたい | まず聴く |
| ホンネ | 2015 | 「Pretty Jones」 | 自分の評判を先回りして引き受ける構え | デビュー期を知りたい | まず聴く |
| Walk | 2017 | 「CHANGE THE WORLD」CD版 | 断定と自問が交互に来る組み立て | 語り口の変化を追いたい | 次に聴く |
| LETTER | 2020 | 「Beef & Chicken」 | 日常の時間を並べて閉じる終曲 | 生活の描写を聴きたい | 次に聴く |
「ALL GODS BLESS ME」
服役を経て改名した後、2022年3月のアルバム「RYKEYDADDYDIRTY」に収録された一曲。TikTokを中心にバイラルヒットした。フックでは、他者の幸福を願う気持ちから、自分も幸せになりたいという気持ちへ視点が移る。
「もう終わりにして」という呼びかけは、悲しみを否定するというより、そこに留まり続ける時間を区切ろうとする言葉だ。幸福を願うフックにつながり、過去を抱えた人の次の一歩へ視線を向けている。
同じ問いかけの形を2度繰り返しながら、1度目は他者の幸福を、2度目は自分の幸福を願っている。他者への願いを先に置くため、自分だけの幸福を求める歌には聞こえない。メロディとともに、願いの宛先が移る構文も、この曲の印象を強めている。
「ホンネ」
1st Album「Pretty Jones」収録。プロデュースは盟友のJIGG。デビュー作の時点で、他人が自分について語る噂を引き受け、自分の経験で答える書き方が表れている。
噂が信じがたいものでも、見聞きした経験として受け止め、決めたことをやり抜く姿勢を示す。
英語と「本音」をつなぐ短いフックで、個人的な来歴を飾らず自分の言葉として差し出す。噂への反論ではなく、その言葉で自分の輪郭を引き受ける曲だ。
自分について流れている話を否定するのではなく、そのまま認めて引き受ける。反論を書かずに肯定で返すこの構えが、後年の作品まで一貫している。デビュー作から態度が変わっていないことが、言葉の組み立てから伝わる。
「Walk」
2017年公開。MVには漢 a.k.a. GAMIや敵刺も参加している。思い込みや過剰な勘繰りを退けた後、自分がこの場所で生きていることを言い切る。
他者の解釈に振り回される危うさと、自分が生きる足場を確かめる言葉が対になる。
「ここ」という短い場所の言葉が、前段で退ける憶測と対照になる。説明を重ねず居場所だけを言い切るため、曲の断定が生活の実感に結びつく。
前半で他者の解釈を否定し、後半で自分の存在だけを言い切る。留保を並べたうえで最後に一つだけ断定する順序が、この曲の推進力になっている。
「LETTER」
2020年5月5日配信、同年6月17日CD発売のアルバム「Beef & Chicken」の最終曲。プロデュースはPENTAXX.B.F。朝の時間の経過と、録音する本人のそばにいる家族の気配を描く。
歌詞では、妻が起きる前に録音を終えようとする朝と、娘の泣き声を聞いて再び意欲を得る場面が描かれる。家族の存在が制作の時間へ入り込んでいる。
制作の意欲を大きな決意としてではなく、娘の声という生活の出来事から言い直す。家族の気配を背景にせず、録音を続ける理由そのものへ置く言葉である。
時刻の推移、家族の気配、録音という作業。派手な事件よりも、日常の時間に焦点が当たる。前3曲がいずれも「自分をどう語るか」の曲であるのに対し、この曲では誰かと暮らす時間そのものに重心が移る。終曲として聴くと、家族と暮らす時間が余韻として残る。
「DEMO TAPE」|自分を知ることから他者へ
MZEE RECORDSが2020年9月に公開した「DEMO TAPE」の公式動画。SIBAがビートを手がけ、BACHLOGICがミックスとマスタリングを担当する。同名音源集の表題曲として、服役前に録音した作品を届けた時期を知る一曲である。
金もなく、誰かを羨む場面から出てくる「自分を信じた」という言葉だ。最初から揺るがない人間の自慢ではなく、悔しさのなかで自分を支える選択として響く。その後に他者を理解する視点が続き、独りで耐える話に閉じない。
参加した主な楽曲
- 田代まさし「リハビリマーシー feat. D.O, 漢 a.k.a. GAMI, RYKEY」(2016)
- DJ CHARI & DJ TATSUKI「Good Die Young feat. RYKEY & Pablo Blasta」
- SIMON「Eyes feat. IO & RYKEY」
RYKEYの逮捕報道とその後
RYKEY DADDY DIRTYは複数回の逮捕が報じられている。2024年にも、9月に沖縄県での暴行の疑い、12月に東京都での建造物侵入などの疑いで逮捕されたと報じられた。
活動の空白と2019年の逮捕報道
デビュー以前にも活動が途切れた時期がある。2015年のCDJournalの取材では、本人が2010年に予定していたアルバムの発売が実現しなかったことや、その間にJIGGと手紙を交わしていたことを振り返っている。2016年にも表立った活動が止まり、レーベルは約1年の空白を経て2017年に再始動したと紹介している。
空白期間については、本人が「人間免許の更新」と表現したことも伝えられている。これは本人の比喩的な振り返りで、事件の罪名や判決を示す言葉ではない。
2019年7月には知人男性への暴行をめぐる逮捕が報じられ、KAI-YOUはその後の起訴と約1年の実刑判決を伝えている。2021年のサイゾーの本人取材でも、水戸刑務所から同年8月に出所した経緯が紹介されている。出所後は「RYKEY DADDY DIRTY」名義で再始動した。
2024年9月|沖縄県での暴行容疑
2024年9月14日、沖縄県警は暴行の疑いで本人を逮捕したと発表したと報じられている。報道によれば、同日早朝に沖縄県沖縄市で、飲食店経営の女性に暴行を加えた疑いとされる。当時、本人は飲酒しており記憶がないとして容疑を否認したと伝えられた。9月16日に那覇地方検察庁へ送致されている。
ORICON NEWSは2024年9月15日、この件で警察官から逮捕状を示される場面を、本人がSNSでライブ配信していたと報じている。
2024年12月|建造物侵入などの疑い
2024年12月4日、警視庁は建造物侵入などの疑いで、本人を含む計10人を逮捕したと報じられている。容疑は2023年12月17日、東京都渋谷区のクラブに正当な理由なく立ち入ったというもので、本人には建造物侵入と暴行の疑いがかけられたとKAI-YOUは報じている。当該クラブでは当時、舐達麻がライブを行っていた。
2024年の事件と後続処分
2024年の各件について、本人と事件の対応を確定できる後続処分の資料は確認できていない。逮捕時の容疑と、後に認定された罪名・判決は区別する必要がある。
RYKEYのビーフと共演の歩み
RYKEY DADDY DIRTYは複数のラッパーとのビーフを経験している。いずれも経緯が長く、専用記事で時系列に整理している。
YZERRとの対立について、発端から経緯までを時系列で整理した専用記事。

ANARCHYとの対立の原因と結末をまとめた専用記事。

GodSon(Playsson)との対立の経緯を整理した専用記事。

なお、舐達麻との関係は、共作を経て対立に転じた経緯がある。2023年12月の件については、前章で、翌2024年12月の逮捕報道として扱っている。
RYKEYについてよくある質問
本名や名義、家族、作品について、本文の要点をまとめた。
RYKEYの言葉を作品からたどる
RYKEY DADDY DIRTYの表現は、生い立ちやその時々の感情を、ラップの言葉に変えることから生まれている。ただし、歌詞は本人の経験を伝えるだけでなく、聴き手へ届く物語としても作られている。
八王子で生まれ、17歳でラップを始め、27歳でデビューした。作品は評価され、TikTok経由で若い層にも届いた。その一方で、逮捕の報道が繰り返されている。
作品への評価と事件の事実関係は、互いの代わりにはならない。音楽では何を語ったのか、報道では何が伝えられたのかを分けることで、RYKEYの歩みが見えやすくなる。
母に勧められた紙とペン、娘の気配がある録音の時間、体に刻む故郷のモチーフ。強い言葉の奥には、家族やルーツに引き戻される場面がある。
2025年にはRYKEYDADDY.X名義で作品を発表した。名義が移り変わっても、生きてきた時間を歌にする姿勢は続いている。
「言葉は、歩いた時間を映す」
Djtube 編集部 / 2026.10
