MC☆ニガリ伊那から届く言葉と、二連覇の先の音楽
MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻は、長野県伊那市出身のラッパー。ラップ歴3カ月で高校生ラップ選手権に出場し、第6回と第7回で初の二連覇を果たした。地元からの自己紹介を歌う「こんばんは」や、日々の生活を言葉にする「GET UP」には、バトルとは別の表情がある。
高校生のころの実績だけで活動を止めていない。UMBでは2021年と2025年に全国王者となり、2026年にはHIDADDY「Rest in Payta」にも参加した。大会の勝敗、共演相手、音源での言葉をたどりながら、その歩みを紹介する。
CHAPTER 01 / SECTION 01MCニガリのプロフィール
名前の表記には「MC☆ニガリ」「MCニガリ」などの違いがある。生年月日と身長は資料によって異なり、従来の紹介では1996年12月30日・178cmとされていた一方、ドリーミュージックのプロフィールは1996年10月26日・175cmと記す。同ページの年齢表記は20歳当時のままで、現在の年齢を表すものではない。誕生日をどちらか一方に確定して年齢を自動計算することは控える。
CHAPTER 02 / SECTION 02MCニガリの生い立ちと名前の由来
父の聴く長渕剛、CHAGE and ASKA
幼いころは、その時々に流行っている曲や、父親の持っていた長渕剛、CHAGE and ASKAなどを聴いていた。初めからラップ一筋で育ったわけではなく、家で流れる歌も音楽の記憶になっている。
ニガリは響き、赤い稲妻は野球のユニフォーム
「ニガリ」は言葉の響きで付けた名前だ。「赤い稲妻」の方は、野球をしていたときに、周囲が白いユニフォームを着る中で一人だけ赤いものを着ており、そう呼ばれたことに由来する。名前の説明にも笑いを交え、深刻な由来を後から付け足さないところに、本人の話し方が表れる。
CHAPTER 03 / SECTION 03高校生ラップ選手権と上京
ラップ歴3カ月で出場し、第6回・第7回で優勝
本人の配信プロフィールによると、友人とのカラオケでラップに興味を持ち、インターネットで聴いた般若に衝撃を受けてラップを始めた。その後GOMESSにラップを教わり、始めて約3カ月で第3回高校生ラップ選手権へ出場した。第3回から第7回まで5大会連続で出場し、第6回と第7回で優勝。第10回のオールスター大会にも出場している。
選手権への応募理由については、暇だったからという趣旨で話していた。ただし、大会へ出た理由と、ラップそのものを始めた理由は同じとは限らない。軽い気持ちの応募から、繰り返し大会へ出て勝ち上がる活動へ変わっていった。
相手や客席へ予想を覆すと呼び掛ける言葉や、卒業祝いとして二連覇を持ち帰ると宣言するフレーズは、高校時代のニガリを印象付けた。単に韻を重ねるだけでなく、その大会の状況を自分の物語へ変える強さがあった。
上京後の音源制作と、UMB全国王者への道
高校卒業後は長野から東京へ移り、音源制作とライブを本格化させた。「こんばんは」のMVは、従来の記事が書かれた時点で100万回再生を超え、バトルのビートとしても親しまれていた。これは当時の到達記録であり、現在の再生数を示すものではない。
音源制作を始めてからもバトルには出続け、UMB東京予選などへ出場した。「フリースタイルダンジョン」では、番組で3人目の完全制覇者となり、賞金100万円を獲得。そのお金を生活費に使ったというエピソードも、飾らない人物像として紹介されてきた。
UMBの全国大会では、2021年に続き、2025年にも優勝した。2025年大会の主催者発表は、12月29日の渋谷WOMBでの優勝を伝えている。高校生の舞台から年月を経ても、即興で勝負する場に立ち続けている。
CHAPTER 04 / SECTION 04MCニガリの服装と恋愛について
パーカー、クロックス、時には下駄
ファッションには強いこだわりを持たず、パーカーやトレーナーといった普段着を選んできた。クロックスを好む一方、戦極MCBATTLEと池袋パルコの企画でCore-boy(現在のNovel Core)と対戦した際には、短パン、パーカー、下駄という組み合わせで登場した。服装がテーマの対戦で、その格好自体が話題になった。
体形についても、ダイエットに成功した人物として紹介されてきた。変化の時期や現在の体重を確定できる資料はないため、過去の体形だけで今の姿を説明することはできない。
過去の交際エピソードと、ラップ中の話を分ける
18歳まで彼女がいなかったことや、選手権をきっかけに「はーちゃん」と呼ばれる相手と交際したことは、当時の上京を追った特集で紹介されていた。その後、「TOHYO CYPHER」では別れやベトナムでの性的経験を題材にしたラップも披露している。
ただし、舞台上のラップは演出や誇張を含み得る。そこで語った内容を、私生活の行動が別途確認された事実として広げることはできない。過去の交際の話から、現在の配偶者や家族についても判断しない。
CHAPTER 05 / SECTION 05ブラックサンダーCMへの出演
高校生ラップ選手権を見た制作側からのオファー
有楽製菓「ブラックサンダー」のCMは、高校生ラップ選手権を見たプロデューサーから、直接メールで依頼が来たことがきっかけだった。本人の「赤い稲妻」と商品の「黒い雷」のイメージを結び付け、「黒いイナズマ」として登場する企画になった。
CMは、恋人のいる側といない側によるラップバトルを軸に展開した。言xTHEANSWERとも共演し、選手権での対戦相手と広告の場でも言葉を交わしている。大会で培った即興のイメージが、菓子の宣伝という別の場へつながった仕事だ。
CHAPTER 06 / SECTION 06MCニガリのMBTIを編集部が考察
Djtube編集部は、公開インタビューと作品から、ISFPを一つの候補と考える。本人公表の検査結果ではなく、表現上の選択を読むための推定だ。
手掛かりは、「こんばんは」で地元を背負う自分を示し、「GET UP」で暮らしの風景から次へ向かう気持ちを言葉にする作り方にある。また、2016年のBARKSインタビューでは、1番とサビまで出来ていた曲を、晋平太に促されて完成させ、予想以上の反応を喜んだと説明した。身近な経験から作り、実際に人へ届けた反応を大切にする姿勢を、感覚と個人的な価値観に重きを置く表現として読んだ。
一方、過去や将来の自分へ思いを広げる歌詞を重く見れば、INFPとも読める。バトルで積極的に話す姿だけでは、日常での外向性や内向性は判定できない。型を使って恋愛や金銭、健康、犯罪などを推測するものではない。
CHAPTER 07 / SECTION 07MCニガリのラップとおすすめ曲
長いフレーズを一息で流れに乗せるフローと、自分の育ちや環境をそのまま題材にする言葉が持ち味だ。相手のいるバトルでは会場の空気へ応じ、音源では自分の時間や身近な風景へ視線を向ける。その違いを聴くと、選手権の勝者という一面だけでは分からない表現が見えてくる。
「こんばんは」――信州から名乗る自己紹介
「こんばんは」は、初期のニガリを知る代表曲。信州で育った自分を名乗り、外からの評価にはラップの力で答えようとする自己紹介だ。従来の記事では、卒業や上京を重ねて聴く曲としても紹介されてきた。ここでは、地元を背負う自分をどう言葉にするかに注目したい。
この短句を含む配信歌詞は「Best of Japanese Hip Hop 2015(mixed by DJ ISSO)」収録版で、元のMVと同じ編集・尺だと確定したものではない。親しみのある挨拶から始めつつ、歌詞は地方から成功を目指す自己提示へ進む。田舎出身であることを引け目として隠さず、ラップで自分を証明する出発点にしている。
「GET UP」――生活の中で次へ向かう
2018年1月31日発表のシングル「GET UP」。朝の食卓や通勤する人、働く日々といった生活の断片を並べ、思いどおりにならない日にも先へ進もうとする曲だ。バトルの鋭さを求める聴き手と、音源の穏やかな雰囲気を楽しむ聴き手で、受け止め方が分かれてきた。
失敗を避ける準備に関することわざを、仲間を選ぶ言葉へ置き換えている。独りで万全を期すより、迷いや失敗を共有する相手を大切にする読みができる。強さを見せる勝負の言葉とは違い、日常で立ち直るための距離感がある。
従来の記事には、バトルのような音源を望む声も紹介されていた。ただし、その意見がファン全体の多数を占めると確認できる集計はない。爽やかさを本人らしくないと決め付けず、表現の一つとして聴きたい。
「for U」――NO1ZYMOVE、ZER0との共演
2025年12月29日発表のNO1ZYMOVE「for U」は、ニガリとZER0を客演に迎えた曲。UMBを通じた出会いから制作された。複数のラッパーが進む方向を語る中、ニガリのパートには、空や建物の影を見つめる場面から、自分の歩みへ戻る流れがある。
止まることを、あきらめることと同じにしない。周囲へ勢いを見せ続ける言葉ではなく、思いどおりにならない時間も含めて進む姿勢として読める。この短句は、配信歌詞でニガリ名が付されたパートにある。
「Rest in Payta」――晋平太へ捧げるマイクリレー
2026年6月22日、HIDADDYが発表した「Rest in Payta」には、ミステリオ、ニガリ、SILENT KILLA JOINT、歩歩、NAIKA MC、KBDが参加した。前年に亡くなった晋平太へ捧げるマイクリレーで、HIDADDYの別名義HIDALAFILLがビートを手掛けている。
ニガリにとって晋平太は、バトルで関わる先輩だけでなく、音源制作へ誘い、曲を完成させるよう背中を押した相手でもあった。共同曲への参加には、その関係の積み重ねがある。参加者全体の言葉を一人の発言へまとめず、それぞれが故人へ向ける曲として受け止めたい。
2022年のアルバム「NAMASTERDAM」など、まとまった作品も発表している。ソロ作品と客演を分けて追うと、昔の代表曲だけでは見えない活動が分かる。
CHAPTER 09 / SECTION 09仲間との活動と評価
晋平太、言xTHEANSWER、じょうとの交流
言xTHEANSWERとは高校生ラップ選手権の第6回、第7回で対戦し、その後CMでも共演した。晋平太のチャンネル「Yo!晋平太だぜ Raps」では、言xTHEANSWERも交え、勝敗を決める大会とは違う場でラップを交わしていた。これは晋平太が生前に残した共演映像だ。
音源では、晋平太「CHECK YOUR MIC REMIX」でR-指定、般若と共演したほか、晋平太、Rude-α、言xTHEANSWERとの「共に行こう」にも参加した。じょうとも交流があり、バトルで出会う相手が、別の場所では制作や遊びの仲間になる。
リスナーの反応には、Amateras、Rude-α、GOLBYとの対戦や、第6回高校生ラップ選手権でのラップを評価するものがある。一方、「CHECK YOUR MIC REMIX」のニガリの仕事ぶりを好み、バトルだけを見ている人へ音源も薦める声もあった。かしわと並べて注目する声や、2014年のUMB東京予選優勝を歓迎する反応も、当時の期待を示している。Amateras戦については、2017年の投稿で柴咲コウの曲を使ったビートにも言及されていた。対戦する言葉だけでなく、意外な選曲との取り合わせが記憶されている。
初めて聴くなら「こんばんは」で出発点を知り、「GET UP」で日常へ目を向ける言葉を聴きたい。「for U」や近年の客演へ進めば、高校時代から年月を重ねたMCが、今も自分の言葉を探していることが分かる。
勝った日の先にも、続いていく暮らしがある
Djtube 編集部


