じょうバトルの毒と、曲に残す希望
じょうは、大阪出身のラッパー。本名は松島丈で、第10回高校生RAP選手権ではT-Pablowを決勝で破って優勝した。相手の矛盾を突くバトルの言葉、ゆのとのNASTY/NA3TYで作ったユーモアのある曲、過去の苦しさを題材にした作品と、表現の顔は一つではない。2026年にはソロEP「国宝」を発表し、がーどまんとのロクデナシ宇宙でも活動を続けている。
CHAPTER 01 / SECTION 01じょうのプロフィール
MCネームのじょうは、本名の丈に由来する。「丈」表記の作品もあるため、配信や映像を探すときには両方の表記が手がかりになる。
CHAPTER 02 / SECTION 02中学時代と、キングギドラとの出会い
じょうは、中学2年のころから、それまで仲間だった友人にいじめられるようになったという。学校へ行く前には早起きしてキングギドラを聴き、自分を奮い立たせていた。批判されることを恐れずに主張する音楽に触れ、自分もラップで見返したいという思いが強まった。
キングギドラはZeebra、Kダブシャイン、DJ OASISによるグループ。じょうにとってのラップの入り口をたどると、勝負のための技術だけでなく、学校で居場所を失いかけた時期に自分の声を持つ手段でもあったことが分かる。
影響源の参考曲:キングギドラ「公開処刑」
キングギドラの「公開処刑 feat.BOY-KEN」を配信で聴く
キングギドラの「公開処刑 feat.BOY-KEN」は、2002年のアルバム「最終兵器」に収録された曲。批判を恐れず自分を主張するラップへ関心を寄せた背景を考えるための参考曲だ。対立的な表現を選ぶことと、本人の私生活での態度を同一視する必要はない。
第10回の優勝後には、自分のような人間でも一つのことに真面目に取り組めばこういう日がある、と周囲へ言葉を送った。ラップを希望と表現したことも、当時のリスナーの心に残っている。
CHAPTER 03 / SECTION 03仕事・服装・恋愛と身近な仲間
葬儀の仕事について語ったこと
ニートtokyoでは、葬儀の仕事をしていた経験を話している。経験したことのないほど強い臭いが鼻から離れなかったという一方、仕事を一人で全部進めることは楽しかったとも述べた。大変さだけでなく、自分で一通り任される面をどう受け止めていたかまで含む話だ。仕事の経験が特定の歌詞へ直接つながったかは、本人の説明がなければ決め付けられない。
普段の服装とSubciety
服装はトレーナー、パーカー、Tシャツなどの日常着が中心で、Subciety(サブサエティ)の着用も紹介されてきた。強いバトルの言葉から想像する姿と、普段の着こなしには違いもある。ただし、服装がシンプルだからファッションにこだわりがない、と内面まで決めることはできない。
中学時代の片思いと、2015年の交際発言
中学時代には、人気者ではなかった自分にも親しく接してくれる女の子へ思いを寄せていたという。しかし、告白をしないまま卒業した。当時の片思いの話と、2015年のSNSで恋人がいると述べたことは、それぞれ別の時点の出来事だ。現在の交際や配偶者の情報へは、そのまま読み替えない。
SHOICHIROとのバトル談義
戦極MC BATTLEのチャンネルには、SHOICHIROとじょうがMC正社員らとバトルについて話す映像がある。MOAIも交えて試合を振り返る企画に出演しており、舞台の勝負だけでなく、周囲とラップを語る場でも交流してきた。
SHOICHIROとは凱旋MCbattleでチームを組み、DOPEMANとは凱旋やU-22 MCBATTLE SP 3on3でも共演している。HARDYも加えたYoung Osaka Kidsという大会チームも、そのつながりの一つだ。
CHAPTER 04 / SECTION 04じょうのMBTIを編集部が推定
Djtube編集部はENTPを候補に挙げる。本人公表の診断結果ではなく、公開されたラップや制作上の選択からの推定だ。バトルで、相手が自分を肩慣らしだと扱ったことに対し、ではなぜ延長になったのかと論理を返す点、NASTYの「クセがすごい」や「愛唄 aka ストーカーの唄」で、言葉の前提をひねって作品の仕掛けを作る点を手がかりにした。
皮肉や発想の転換を表現に使う姿へ着目したが、それは舞台や楽曲のキャラクターでもある。自分の思いを強く伝えるENFPという読みもできる。いじめの経験を性格型の原因としたり、歌詞の語り手を本人そのものと決めたりする見方ではない。
CHAPTER 05 / SECTION 05高校生RAP選手権から現在の活動へ
第10回のオールスター戦で優勝
初出場は第6回高校生RAP選手権だった。その後、過去の優勝者やファン投票による人気MCが集まる第10回のオールスター戦へ出場。勝ち上がった決勝では、それまで2度優勝していたT-Pablowを破った。
優勝後はフリースタイルダンジョン、UMB、KING OF KINGS、戦極、凱旋などへ出演した。フリースタイルダンジョンでも、相手とのやり取りを組み立てる姿を繰り返し見せている。対戦相手の言葉を違う角度から返し、核心を突く応答を重ねてきた。
相手への強いディスも特徴だが、バトル上の表現を、本人が人間関係で一切敬意を持たないという意味にはしない。T-Pablowに武道館で勝ったという実績を相手へ返す場面も、試合の文脈の中での表現だ。
ゆのとのNASTY/NA3TY
2016年に、ラッパーのじょうとDJ/トラックメイカーのゆのでNASTYを結成した。2019年5月1日には、元号が変わるのに合わせて表記をNA3TYへ変更。ゆのは読み方はナスティーのままだと説明している。音源はiTunes、LINE MUSIC、Apple Musicなどで配信され、ライブ活動も行った。
ズキ子も参加した「Cypher Vol.4」
じょうのチャンネルで公開された、デビ・デビ子、ズキ子、mi-rai.、まゆちゃむ。、義母りんによるサイファー。複数のラッパーが一つのビート上でバースをつなぎ、出演者それぞれの表現を楽しめる。
現在はソロとロクデナシ宇宙でも作品を発表
現在の活動をNA3TY時代だけで止めて見る必要はない。がーどまんとのロクデナシ宇宙では、2026年に「3ページ」やEP「マトモじゃない」、既存曲を別の形にした「ロクデナシ宇宙(ドパガキリミックス)」などを発表。じょう名義でも同年8月に4曲入りEP「国宝」をリリースした。
CHAPTER 06 / SECTION 06じょうの曲とラップの言葉
リズムを保ちながら言葉が追いやすいフロウと、耳に残る反復がじょうの持ち味だ。コミカルな題材を使う作品がある一方、学校での苦しさや、自分を奮い立たせる言葉を扱う曲もある。どちらか一方だけで人物像を決めるより、作品ごとの語り手と仕掛けを聴き分けたい。
「愛唄 aka ストーカーの唄」
丈表記でも知られる初期の曲で、ストーカーの視点を使った物語になっている。奇妙なテンポ、メロディ、語り口が重なる点が、作品の印象を作っている。題材の人物をじょう本人の実体験や行動と混同せず、語りの演出として読む曲だ。
以前のDjtube記事は、相手が笑えない状態と語り手が笑い続ける状態を対にし、さらに涙についても二人の状態を逆向きに並べる詞の構成へ注目していた。普通の愛情表現のように相手の幸せを望むのではなく、相手と自分の感情が反対になる怖さを使った表現だ。
NASTY「クセがすごい」
ゆのと組んだNASTYの曲で、繰り返す言葉とメロディの印象が強い作品。「愛唄」の物語とは違い、一度耳にした語句を残す反復が前へ出ている。当時の編集評にはCreepy NutsのMVを思わせるという映像の感想もあったが、制作側の影響関係が公表されたという意味ではない。
KOMYとの「クセがすごい(KOMY REMIX)」という別版も配信されている。原曲の映像とリミックスの歌詞を、同じ音源や同じパートとして取り違えずに聴きたい。
2026年EP「国宝」から「学校へ行こう!」
「国宝」には表題曲、「my name is」「学校へ行こう!」「怪物」の4曲を収録。「学校へ行こう!」はじょうが作詞と歌唱を担い、作曲・共同プロデュースはロクデナシ宇宙が担当する。学校へ向かうことを繰り返す言葉と、その前にある痛みや怯えを並べた曲だ。
今の苦しさをすぐに消せるとは言わず、光が当たる時に備えるという先の時間を置いている。学校へ行くよう呼び掛ける言葉だけを切り離すより、その前後にある怯えや、簡単に変わらないという感情と一緒に読むことで、単純な励ましには収まらない曲の視点が見える。
CHAPTER 08 / SECTION 08当時のリスナーの反応
2016年のファン投稿では、かんちゃんがラップのかっこよさへ反応し、Hirokiは批判より応援したいという姿勢を示した。フリースタイルダンジョンを見た卍まこと卍も、放送でのラップに惹かれたと発信している。
第10回高校生RAP選手権については、マド君がオールスター戦の試合の水準を挙げ、T K SとShuto BABY Icchiは、じょうがラップを希望と答えた言葉に反応した。2017年末の歩はチーム戦の勝敗とともにじょうを評価し、2018年のジュンジはニガリとの一戦を見てU-22のDVDを予約したと書いている。勝敗だけでなく、言葉や一つのバースから作品を追う行動へつながった例がある。
CHAPTER 09 / SECTION 09よくある質問
毒のある言葉にも、希望の行き先がある
Djtube 編集部
