IO世田谷の仲間から始まり、街の景色をラップにする
IO(イオ)は、東京都世田谷区出身のラッパー。KANDYTOWNの一員として知られ、ソロでは「Soul Long」「Player’s Ballad.」「four」「JUST ALBUM」と作品を重ねてきた。映像や写真、ファッションにも関わり、自分が過ごす時間の景色を、音と言葉へ切り取る。
父の車で聴いたソウル、幼馴染のYUSHIが教室で聴かせたラップ、町田での初ライブ。IOの表現は、親しい人との何気ない日常から生まれた。2025年には自身のレーベルVERETTA SOUNDSを始め、2026年にはTeteとの「Calling Back」を発表している。
CHAPTER 01 / SECTION 01IOのプロフィール
2017年の本人取材のプロフィールでは、1991年生まれと紹介されている。誕生日の月日を確定できないため、年齢を自動計算する表記は置かない。ラッパーのほか、映像制作チームTAXi FILMSの活動や、アートディレクター、モデルとしての仕事もある。
CHAPTER 02 / SECTION 02IOの生い立ちとラップの始まり
小学4年生、父の車で聴いた「Lovin’ You」
小学校4年生ごろ、父の車から流れるR&Bやソウルに興味を持った。中でもMinnie Ripertonの「Lovin’ You」は、初めて自分から好きだと感じた曲だったという。参考音源は、そのMinnie Ripertonの曲であり、IOの作品ではない。
父が聴く曲を、当時からジャンルとして説明できたわけではなかった。単純に良いと思って聴いたメロウな音が、その後、ヒップホップのサンプリングにも親しみを持つ入口になった。
後ろの席にいたYUSHIが聴かせたラップ
ラップとの出会いは、中学生のころ。後ろの席にいた幼馴染のYUSHIが、自分で書いたラップを聴かせてきた。周りの友達もヒップホップへ夢中になり、IOも自然に聴き、書くようになった。
YUSHIやB.S.C.の家に集まり、映画を見たり、音楽を聴いたりして遊ぶ中にラップがあった。最初は自分はやらなくてもいいと思っていたが、仲間が皆ラップを始め、自分だけ暇になったことも始める理由だったと笑って話している。
DMXやFabolous、Ja Ruleを聴いた十代
当時聴いていたのは、DMX、The Diplomats、Fabolous、Ja Ruleなど、2000年代初期のヒップホップだった。Fabolous「Into You」や、参考映像のJa Rule「Mesmerize feat. Ashanti」のように、ラップに歌が重なる曲も好んだ。
仲間とラップを始め、15~16歳ごろにはBANKROLLというグループになっていた。初ライブは2007年の夏ごろ、町田のFlava。当時通っていた学校の方向にあり、学校の友達が来やすい場所を選んだという。KIKUMARUも、当時は別のグループでその現場にいた。
BOOT STREETで認めてもらった16小節
19歳ごろ、渋谷・宇田川町のCDショップBOOT STREETで働きながらラップを続けた。JASHWONとG.O.K.に促されて16小節ほどラップしたころから、ラッパーとして見てもらえるようになったと振り返っている。
JASHWONが送るトラックへラップを入れて返すやり取りを重ね、やっと強い手応えをもらえた曲が「Dig2Me」だった。一度の出会いだけでなく、先輩の反応を受けながら曲を作る時間が、ソロへつながっていった。
CHAPTER 03 / SECTION 03YUSHIとKANDYTOWNの歩み
BANKROLLとYaBastaがつながったクルー
KANDYTOWNは、世田谷区の喜多見を中心とする幼馴染たちの集まりから生まれたヒップホップクルー。BANKROLLと、GottzらのYaBastaが一緒になり、作品を発表する集団として形になった。結成は2012年と紹介される一方、IOは作品を出すため名前を付けた時期を2014年ごろと振り返っている。
2014年11月の「KOLD TAPE」、2015年の「BLAKK MOTEL」「Kruise」を経て、2016年にはアルバム「KANDYTOWN」でメジャーデビューした。2021年には配信作をまとめた二枚組CD「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」も発表している。
メンバーにはBSC、DIAN、DONY JOINT、Gottz、Holly Q、IO、KIKUMARU、DJ MASATO、MIKI、DJ Minnesotah、MUD、Neetz、Ryohu、DJ Weelow、KEIJU、そしてYUSHIがいる。YUSHIが亡くなった後も16人と数え、彼を含む集団として紹介してきた。
「K」は喜多見の頭文字。IOにとっての「タウン」は、ただの地名より、仲間が共に立つ場所や状況に近い言葉でもあった。2023年3月の日本武道館での単独公演をもって、KANDYTOWNは終演した。その後のメンバーのソロ活動とは分けて捉えたい。
KANDYTOWN「One More Dance」から知るクルー
クルーを知る映像として、KANDYTOWN公式の「One More Dance」を紹介する。IOのソロ曲ではなく、異なる声を持つメンバーが集まるKANDYTOWNの作品だ。クルーの活動と、個人名義の作品の違いも知ることができる。
親友YUSHIを、作品と体へ残す
YUSHIは、ドカットの名でも活動し、ハマ・オカモトらのバンド「ズットズレテルズ」にも参加したラッパー。父は草刈正雄、姉は紅蘭で、IOとは小学生のころからの親友だった。IOは、YUSHIほど自由で型にはまらない人の真似はできないとも語っていた。
2015年2月14日、建物からの転落事故で急逝した。「KOLD TAPE」で注目が広がり、SPACE SHOWER TVから取材の話が来て喜んでいた時期に、収録前日の訃報を受けたというKEIJUの話もある。IOは、仲間がYUSHIから受けた影響の大きさを繰り返し語ってきた。
ソロデビュー作「Soul Long」は、一周忌に当たる2016年2月14日に発売した。「Soul Long」という言葉もYUSHIのノートから見つけたもので、意味を一つに決めるより、響きから想像できるものを大切にしている。
YUSHIの姉とニューヨークへ行き、好きだった街に彼の遺骨をまいた。その旅で、IOはハーレムで肩にYUSHIの顔のタトゥーを入れた。曲だけではなく、自分の体へも、共にいた人の姿を残している。
CHAPTER 04 / SECTION 04BCDMG、Def Jam、現在のレーベル
「Dig2Me」と、先輩たちとの制作
JASHWONのもとで作る中から生まれたIOの曲。ソロアルバムを出す前、ラップをトラックへ乗せて返す日々の中で、先輩たちの評価が変わった一曲として本人が挙げている。アルバムの「Dig 2 Me (Remix) feat. BSC, MUD」と、元の映像の版は区別したい。
曲ができるまでをたどると、見せたい自分を一度で完成させたわけではないことが分かる。先輩へラップを返し続けた時間の中で、言葉とトラックの組み合わせを見つけた一曲だ。後のリミックスではBSCとMUDも加わり、ソロで作った曲が仲間との曲へも広がっている。
BCDMGは、BIG CROW DOG MUSIC GROUPを略したクリエイター集団。JASHWONを中心にI-DeA、G.O.K.、LostFace、BOMBRUSH!、EDOWORD329、Samurai YaSらが関わり、IO、KEIJU、DONY JOINT、Ry-laxらのラッパーも活動してきた。
BCDMGの作品と、IOの活動
BCDMGは2013年に「Ordinary Life」、2016年にはIOらが参加した「Fact Of Life」を発表している。参考映像の「COMPLETE」はANARCHY、JAZEE MINORが参加するBCDMGの曲で、IOの歌唱曲として紹介するものではない。
2019年、Def Jamから「Player’s Ballad.」
IOはP-VINEからの二作品を経て、2019年にDef Jam Recordingsと契約し、6月19日に「Player’s Ballad.」を発表した。全13曲で、KANDYTOWNのメンバーに加え、5lack、Yo-Sea、MALIYAらも参加。参考映像は収録曲「Player’s Section.」のセッションで、アルバム全曲のMVではない。
Def Jamは1984年に設立され、Public Enemy、Beastie Boys、Rihannaらの作品でも知られるレーベル。日本でもDef Jam Japanなどの名で展開し、IOが加わった時期にはAK-69が先輩として活動していた。
その後、IOは2023年に四作目「four」を発表。2025年には自身のVERETTA SOUNDSから「Spotlight」「JUST ALBUM」を出し、初期の所属表記だけでは説明できない次の制作段階へ進んでいる。
2021年には「ラップスタア誕生」の審査員へ
2021年10月からの「ラップスタア誕生」では、Awich、R-指定、AKLO、T-Pablow、YZERRと共に審査員を務めた。参考映像は、この顔ぶれによる公式サイファーだ。
番組はラップの新たな才能を発掘するオーディションで、当時は優勝賞金300万円を掲げていた。Leon Fanourakis、¥ellow Bucks、Ralphらを輩出した番組に、IOも判断する側として関わった。
CHAPTER 05 / SECTION 05大橋リナとの家族と表現
妻はモデルの大橋リナ。コロンビア出身で、「egg」「JELLY」などのモデルとして活動してきた。「テラスハウス」に関連するイベントにも登場しており、2015年の歴代出演者が集まる催しでも名前が紹介されている。従来のプロフィールでは、大橋リナバネッサという名前、1993年4月8日生まれ、身長160cm、血液型O型、A-Light所属とも紹介されていた。所属や仕事の状況まで、過去の表記を現在へそのまま当てはめるものではない。
出会いは、リナが友達に連れられて見に行ったライブ。その後、行きつけの店で再会して交際へ進み、約二カ月でIOからプロポーズしたと、以前の紹介で語られている。2017年10月には第一子の妊娠を発表。本人取材のプロフィールでは、2017年と2019年に出産し、二人の子供がいることを公表している。
IOは2025年の取材でも、妻の家族がいるコロンビアへ行き、帰国後に曲を作った話や、子供へ自分の仕事を見せる考えを語った。2022年には、大橋リナをIOが撮影した写真集「VANESSA」も発表している。モデルと撮影者として、二人の表現が重なる仕事でもある。
CHAPTER 06 / SECTION 06IOのファッションとタトゥー
ブランドの値段より、思い入れを選ぶ
Adidas、Calvin Klein、COACH、Loro Piana、Louis Vuitton、Tom Ford、Ferragamo、Tiffanyなどが、これまでの着用ブランドとして紹介されてきた。ジャケットやスーツを使う姿も多く、髪はサイドを短く整えたフェードと、クラシカルなショートヘアで知られる。
ジュエリーも、18KのチェーンやTiffanyのブレスレットを着けてきた一方、本人は友人に作ってもらったものや、旅先で買ったものなど、思い入れのある品を選ぶと話している。Ferragamo、Calvin Kleinなどのモデルにも起用された。
2021年8月にはEYESCREAMで川上智之が連載する「End roll」にも登場。服を着る仕事だけでなく、映像や写真を作る側でも、見せたいムードに関わっている。
タトゥーと、親友の記憶
鎖骨の左右には英語のレタリング、左肩にはYUSHIの顔のタトゥーがある。上半身の姿は「Shawty.」のMVでも紹介されてきた。肩の図柄は本人が取材で語った親友への思いと結び付くが、それ以外の文字の意味を外見だけから補うことはしない。
CHAPTER 07 / SECTION 07IOのMBTIを編集部が考察
Djtube編集部は、公開された制作の選び方からISFPを一つの候補と考える。本人が公表した検査結果ではない。
手掛かりは、まず自分が良いと思う音を選び、感じた景色を言葉にするという作り方にある。2025年の取材でも、書けないビートへ無理に執着せず、別のビートを試すようになったと話す。大きな計画を説明するより、そのとき自分が納得できる音やムードを積み重ねる姿勢を重く見た。
一方、断片の情景から聞き手に想像を委ねる点を重視すれば、INFPという別解もある。映像や写真の趣味、寡黙に見える外見だけでタイプを決めたものではなく、作品の作り方から見える一面に限った推定だ。家族関係や非公表の属性を説明するためにも用いない。
CHAPTER 08 / SECTION 08IOの音楽と代表曲
IOは、まずメロディーを作り、そこへ言葉を置く方法を語っている。感情を説明する文章だけではなく、その場にあった景色を見せ、聞き手が想像できる余地を残す。ソフトな声とメロディアスなフロウは、その言葉の置き方と一緒にある。
「Shawty.」――二つの視点で描く距離
2019年の「Player’s Ballad.」に収録された曲。GOODMOODGOKUが制作に関わり、男女の間にある曖昧な距離を描く作品として紹介されてきた。MVには「My View」と「Your View」の二つの視点があり、ここで紹介するのは「My View」。大橋リナも出演している。
言葉を交わしていても、互いに満足できているわけではない。従来の曲紹介で取り上げられた会話や、会いたいのに会えないという気持ちは、関係を一つの説明で片付けないIOの作り方ともつながる。二つの視点を持つ映像も、同じ関係から違う景色が見えるという仕掛けだ。
「Bill.」――手にしたものと、残る痛み
「Player’s Ballad.」に収録されたソロ曲。かつて見ていた夢を手にした現在と、消えない痛みや仲間への思いを重ねる。過去と現在を行き来する曲として、初期の代表作の一つに挙げられてきた。
守るものが増えるという言葉に続く短句だ。成功を金額だけで示すのではなく、大人になるにつれて責任も変わるという視点がある。一人では今の場所にいないという終盤の言葉も、仲間や家族を持つ人の現在を見せる。失った人へ思いを寄せる部分と、止まらず進む姿勢が同じ曲にある。
AK-69「B-Boy Stance feat. IO」――華やかな場所でも変えないもの
AK-69の2020年のアルバム「LIVE : live」に収録された共演曲。名古屋のDJ・刃頭らが音楽を手掛け、異なる街から来た二人が、ヒップホップへの姿勢を並べる。Def Jamで先輩と後輩になった二人の共作でもある。
正規歌詞でもIOのパートとして示される言葉だ。その後には、パリのファッションウィークへ呼ばれ、スーツが届く現在の暮らしも出てくる。それでも地に根を張るという順序だから、服や成功への憧れと、仲間を手放さない姿勢が対立せず同じ人物の中にある。
「Spotlight Remix feat. Kohjiya, Tete」――次の声を迎える
2025年9月3日のリミックス。7月の「Spotlight」はIOのソロ曲で、KohjiyaとTeteはバックグラウンドボーカルとして参加していた。リミックスでは二人がラップの共演者となり、10月31日のEP「JUST ALBUM RELOADED」にも収録された。作曲・プロデュースはKORK。
照らしてほしいというフックを、二人の新たなバースが挟む。共通する舞台の言葉を保ちながら、違う土地や経験の声を加えるのが、この版の面白さだ。共同作詞の歌詞全体にある短句として引用し、担当区切りのない表示だけでIO一人の歌唱箇所とは断定しない。
「Calling Back feat. Tete」――今を書き留める共作
2026年7月24日のシングルで、MVは8月に公開。IOとTeteが作詞とラップを担当し、GooDeeが作曲・プロデュース、KohjiyaとKORKがアダプターとしてクレジットされる。レーベルはVERETTA SOUNDSだ。
始めたときを忘れないために、現在を書き留めるという流れに置かれる言葉だ。曲には、関係をやり直したい呼び掛けと、親になって変わる覚悟も含まれる。二人の共同曲全体として、過去へ電話をかけるような題名と、前へ進む暮らしが交わる。個別パートの区切りがない歌詞表示から、父親としての描写をどちらか一人の実体験へ割り当てることはしない。
2026年には「Soul Long」の発売十周年を記念したアナログ盤も発表された。新しいジャケットはIO自身がディレクションしたもの。2016年の録音作品の新装盤と、新曲「Calling Back」は、別の仕事として知っておきたい。
CHAPTER 09 / SECTION 09IOとラッパーの交流
KEIJU、Gottz、KIKUMARU、YUSHIとは、少年のころからの時間がある。KEIJUとはYUSHIを通じて知り合い、同じクルーの中心で互いを認めながら、個人の作品でも共演してきた。
KEIJU「Remy Up feat. IO」――昔の話を、今の街で歌う
2020年のKEIJUのアルバム「T.A.T.O.」を締めくくる曲。IOが客演し、TikTokでも広がった曲として紹介されてきた。ここで紹介するのはKEIJU公式の音源で、ライブや別のリミックスではない。
昔と同じように街を走る言葉の中に、失うことを知った後の変化も入る。何も変わらないという歌ではなく、変わっていく自分が、かつての仲間や時間へ戻ろうとする曲として読める。共同作詞の表示は担当者別になっていないため、この短句をIO個人のパートとは断定せず、二人の曲全体の中で読む。
AK-69との出会いと、チェーンの小話
AK-69との出会いは、2016年ごろのBCDMGのリリースパーティーだった。クラブへ来たAK-69の姿をIOは鮮明に覚えており、AK-69も、以前からIOの人柄を聞いていて、合う空気を感じたという。参考映像は曲ではなく、2020年の二人の対談だ。
IOがDef Jamへ入った際には、AK-69がロゴを模したペンダントトップを贈ろうとしたものの、IOはすでに自分で注文していた。知っていれば作らなければよかったと返す、二人の笑い話も残っている。先輩と後輩という関係にも、構え過ぎない距離がある。
KID FRESINOとニューヨークで録った曲
KID FRESINOは帰国した日にIOのライブへ行き、Gottzを通じてつながった。客演の依頼を受けたIOも、送られてきたビートと、FRESINOの活動を知った上で参加を決めた。
「Special Radio」では、IOがニューヨークへ行く機会に、映像も撮ることになった。バースを録ったイーストハーレムの部屋は二人が入るだけで一杯で、一緒にいたKIKUMARUは外で待っていたという。
その滞在中に受け取った「Tap Four」のビートが、「Soul Long」の制作の入口にもなった。共演は一曲で完結せず、次のアルバムの音まで運んでいった。
仲間のいる街から生まれたラップを、自分が良いと思う音で更新していく。KANDYTOWNの終演後も、IOの作品には、昔からの人の顔と、新しく出会う声の両方がある。
今いる景色を切り取り、始まりの日を忘れない
Djtube 編集部
