ZORN(ゾーン)は、東京都葛飾区新小岩を拠点とするラッパーである。ZONE THE DARKNESS名義でMCバトルから頭角を現し、2014年の改名以降は、家族や地元といった手元の題材を扱う書き手として支持を広げた。最初の1曲を選ぶなら「My life」が入口になる。本記事では、旧名義期から2026年の最新曲までの13曲を、確認できた収録情報とともに紹介する。
この記事でわかること
- 最初に聴くべき1曲と、そう判断した理由
- 旧名義期・昭和レコード期・独立前後・近年の4つの局面から選んだ13曲
- それぞれの曲で何が起きていて、どこを聴けばよいのか
- 入門順や目的別の聴き方
- 2019年の独立以降の活動と、2026年の公演予定
- 配信で聴く際に知っておきたいこと
よくある疑問と、短い答え
検索して真っ先に確認したい項目だけを、1行ずつ先に置いておく。根拠と詳細は、それぞれ対応する章で扱う。
| 疑問 | 短い答え | 補足 |
|---|---|---|
| 最初に聴くなら? | My life | 日常を主題にした代表曲 |
| 出身は? | 東京都葛飾区新小岩 | 地元を繰り返し題材にしている |
| 昔の名義は? | ZONE THE DARKNESS | 2014年にZORNへ改名 |
| 所属は? | 自主レーベル All My Homies | 2019年に昭和レコードを離れて設立 |
| 何曲紹介している? | 13曲 | 旧版の10曲を実査で訂正し3曲を追加 |
| 歌詞は載っている? | 必要な箇所のみ原文で掲載 | 理由は該当章で詳述 |
| 順位は付いている? | **付けていない** | 理由は該当章で詳述 |
※上表は2026年8月時点で確認した内容です。配信状況はサービスや地域によって異なる場合があります。
CHAPTER 01 / SECTION 01最初に聴くべき1曲|My life
ZORNを1曲だけ聴くなら「My life」である。ラッパーとしての活動と、勤め人としての生活と、父親としての役割が、同じ地平に並べて描かれている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主題 | 日々の生活そのもの |
| 描かれる姿 | 作業着での仕事と、家庭での役割 |
| 語りの姿勢 | 誇張せず、手元にあるものだけで組み立てる |
| 入門度 | 最も高い、この人物の書き方が1曲で分かる |
| 向いている人 | 等身大の言葉を聴きたい人 |
この曲を最初に置く理由は3つある。第一に、この人物が何を書く人なのかが1曲で分かる。第二に、ヒップホップに馴染みがなくても、扱っている題材が生活そのものなので入りやすい。第三に、この曲を軸にすると、前に遡っても後を追ってもキャリアの変化が見える位置にある。
この曲の姿勢が最も端的に出るのが、末尾に置かれた一行である。
家事という、ヒップホップの語彙から最も遠い行為を、そのまま音楽の側へ引き寄せている。誇示によってではなく、対象の範囲を広げることで成立させている点が特異である。発表当時、この一行がその年を代表する言い回しとして受け止められた。
裏を返せば、生活のどの部分も題材になりうるという宣言でもある。作業着で働く時間も、家庭での役割も、同じ資格で曲に入る。この線引きの緩さが、のちの作風を決定づけた。
この曲がヒットしたあとも、しばらくは数十人規模の会場で演奏を続けていたと報じられている。ヒット曲が出た瞬間に環境が変わったわけではない。そこから武道館やアリーナ規模へ至る過程が、この人物のキャリアの実態である。
この記事で最初に見つけた問題は、掲載曲ではなく事実関係のほうだった。旧版はアルバムのリリース年をほぼ全て誤っており、複数の作品が同じ年に発売されたことになっていた。「サードチルドレン」は2014年、「The Downtown」は2015年、「生活日和」は2016年であり、旧版が示していた年次とは食い違う。もう一点、旧版は歌詞を地の文に直接混ぜて置いていた。歌詞は削らず、原文のまま dj_lyric へ移し、出典表記と、その一節を論じる解説を書き足す形で是正している。加えて、2022年11月3日のさいたまスーパーアリーナ公演で東京ドームでのワンマン開催が発表されており、旧版にはこれが載っていなかったため追記した。
CHAPTER 01 / SECTION 02選定基準|どう選んだのか
この記事の13曲は、次の基準で選んでいる。点数による優劣ではなく、20年以上の活動のどの局面に触れられるかを軸にした。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 活動時期の網羅 | ZONE THE DARKNESS名義の時期から2026年まで、時期が偏らないよう配分 |
| 主題の分散 | 地元・家族・仕事・死生観など、扱う対象が重ならないようにする |
| 書き方の変化の可視化 | 荒れた語り口の時期と、生活を主題に据えた時期の双方を含める |
| 収録情報の確認 | レーベル発表と配信サービスの公式情報で確認できたものを優先 |
| 公式音源の存在 | 公式のミュージックビデオが確認できること |
この記事では、旧版にあった順位と5段階の星評価を廃止した。同じ書き手の楽曲に編集部が順位を付けても、入門者にとっての判断材料にならないためである。代わりに、後半の一覧表で「どの目的に向くか」を列として示している。
歌詞の扱い|引用の要件と、その範囲
本記事では、論じるうえで必要な箇所に限り、歌詞を原文のまま引用している。言い回しそのものを対象に論じる場合、要約に置き換えると議論が成立しないためである。
掲載にあたっては、引用元の楽曲名・アーティスト名・発表年を明示し、引用箇所を本文と視覚的に区別している。分量は各曲について必要最小限にとどめ、引用した一節については、必ずそれを上回る分量の解説を付している。表記や改行は原典のまま変更していない。
この記事で使う用語|レペゼン・リリック・パンチライン・プロデュース
本文で繰り返し出てくる4語を先に定義しておく。いずれもヒップホップの文脈で意味が変わる語である。
レペゼンとは、英語のrepresentに由来し、自分がどの土地や集団を背負っているかを示す語を指す。この人物の場合は葛飾区新小岩がそれにあたる。
リリックとは、ラップの歌詞を指す。この人物の場合、韻の硬さと日常語の配合の両方で評価されてきた要素である。
ヒップホップにおけるプロデュースとは、主にトラック(伴奏)の制作を指す。誰が担当したかで曲の質感が大きく変わる。
4語のうち「レペゼン」が、この人物を理解する鍵になる。地元を背負うという姿勢は、20年以上の活動を通して一度も動いていない。
CHAPTER 02 / SECTION 03旧名義期の1曲|ZONE THE DARKNESS時代
改名前のZONE THE DARKNESS名義には、いまとは異なる語り口がある。この時期には3枚のアルバムとEPが発表されている。
奮エテ眠レ|20代前半の語り口
ZONE THE DARKNESS名義の時期を代表する1曲である。当時20歳前後にあたり、いまの作風とは温度がまったく異なる。
トラックは渋く、言葉は鋭い。のちに家族や生活を主題に据える書き手が、この時期には別の方向を向いていたことが分かる。近年の曲から入った人ほど、この落差に驚くはずである。旧名義期にはこの系統の曲が多く、まとめて聴くと変化の幅が掴める。
CHAPTER 02 / SECTION 04昭和レコード期の5曲|書き方が変わるまで
2014年、般若が主宰する昭和レコードに加入し、名義をZORNへ改めた。般若・SHINGO★西成に続く3人目という位置づけであり、この時期に書き方が大きく変わっていく。
2 Da Future|反抗期を振り返った1曲
2020年10月28日に事前告知なく発表された9thアルバム「新小岩」に収録された楽曲である。旧版はこの曲を2016年の「サードチルドレン」収録としていたが、当編集部が公式ディスコグラフィーを確認したところ、収録先は「新小岩」であり、同アルバムの発売年も2020年であった。
多感な時期の暗い部分を、そのまま題材にしている。先が見えず、誤った選択もした時期を振り返りながら、年齢を重ねて見えてきたものへ視線が移っていく構成である。独立後の作品でありながら、旧名義期の語り口に近い温度を持つ1曲である。
Reverse|下積みと仲間を扱った1曲
2015年のアルバム「The Downtown」に収録された楽曲である。学校での評価より観客の反応を選ぶという、進路をめぐる価値観が主題になっている。
進路をめぐる価値観は、学校の評価と観客の反応を並べた箇所に集約されている。
点数と歓声を同じ天秤に載せている点が要である。どちらも他者からの評価だが、片方は制度が決めた基準で、もう片方はその場にいる人間が返すものである。周囲の否定に対する反発も、この対比の延長線上に置かれている。
もうひとつの軸が、下積み時代からの関係である。無名の時期を知っている人たちが、いまどう接しているかが具体的に書かれている。
ここで重いのは「本名で呼ぶ」という一点である。名義は活動のために作った器であり、その器ができる前から知っている相手には、器を通さずに届く。客が入らない舞台を共有した記憶が、呼び方という形で残っている。
関係が変わらないことを、感傷ではなく事実として置いている。のちの「All My Homies」へ続く主題の出発点として聴ける1曲である。
夕方ノスタルジー feat. WEEDY|幼少期の情景を扱った1曲
2016年のアルバム「生活日和」に収録された楽曲である。客演にWEEDYを迎えている。
幼い頃の遊びや、そのときに見ていた景色が題材になっている。後述する「葛飾ラップソディー」と対になる曲であり、どちらも懐かしさを軸に据えている。2曲を続けて聴くと、この人物が地元をどう描いてきたかが掴める。
My life|日常を主題にした代表曲
2016年のアルバム「生活日和」に収録された楽曲である。詳細は本記事の冒頭で扱っている。
この曲以降、生活そのものを題材にする書き方が定着していく。「生活日和」と次作「柴又日記」は、その路線を続けて打ち出した2枚として語られることが多い。
Letter|家族に宛てた1曲
2016年のアルバム「生活日和」に収録された、2人の娘へ宛てた楽曲である。出会った頃から現在まで、そして将来起こるであろうことまでが書かれている。
この曲の核心は、関係の根拠をどこに置くかを述べた箇所にある。
出生の瞬間を共有していないことを、まず正面から認めている。そのうえで、共有していないものの代わりに何を積み上げてきたかを示す。順序としては「葛飾ラップソディー」と同じで、欠けている側から始めて価値へ転換している。
宛先が家族であるぶん、この曲では転換の対象が土地ではなく関係そのものになっている。家族を題材にした曲はこの人物に複数あるが、宛先が明確なぶん、この曲がもっとも直接的である。
CHAPTER 03 / SECTION 05柴又日記期の3曲|生活を主題に据えた時期
2017年にはEP「なにか+1」と7thアルバム「柴又日記」が発表された。前作「生活日和」の路線をさらに進めた時期にあたる。
かんおけ|死を日常の延長として扱った1曲
2017年のアルバム「柴又日記」に収録された、死を主題にした楽曲である。特別な出来事としてではなく、日常の延長線上にあるものとして扱っている点が特徴である。
トラックはTHA BLUE HERBのO.N.Oが制作している。重い主題を扱いながら疾走感が保たれているのは、このトラックによるところが大きい。他のラッパーへのトラック提供が多い制作者ではなく、この曲は例外的な組み合わせとして知られている。
新しい日々|這い上がる過程を描いた1曲
2017年のEP「なにか+1」に収録された楽曲である。ミュージックビデオでは、蝋燭が道しるべのように一本ずつ立てられていく構成が採られている。
底の時期から、平凡な暮らしを手に入れるまでの過程が主題になっている。この人物の曲では、平凡であることが到達点として置かれる。そこが、成功を誇示する型のヒップホップとの分かれ目である。
葛飾ラップソディー feat. WEEDY|地元を主題にした1曲
地元である葛飾を正面から扱った楽曲である。客演には「夕方ノスタルジー」と同じくWEEDYを迎えている。
地下鉄が通っていない代わりに古いものが残っている、便利ではない代わりに歴史がある——利便性の不足を、そのまま土地の価値として言い換える運びが、この曲の要である。地元を扱う曲は数多いが、ないものを数え上げてから肯定へ持っていく構成は珍しい。
その運びが最も凝縮されているのが、地下鉄と歴史を並べた一節である。
ここで行われているのは、欠けているものを先に認めるという操作である。便利さで勝てないことを隠さずに置いたうえで、その代わりに何が残っているかを示す。地元を誇る曲は数多いが、多くは持っているものから語り始める。この曲は持っていないものから語り始める。
言い換えれば、条件の悪さを弁解せずに価値へ転換している。だからこそ、同じように便利ではない土地に住む人にも届く。地元を扱う曲としての射程が広いのは、この順序のためである。
※本曲の初出アルバムについては、複数の媒体で記載が食い違っており、当編集部では確定できていません。
CHAPTER 03 / SECTION 06独立前後の3曲|レーベルを離れるまで
2018年から2019年にかけて、活動の規模と体制が大きく変わった。2019年7月には昭和レコードを離れ、自主レーベル「All My Homies」を設立している。
Walk This Way feat. AKLO|再生数が突出した1曲
2018年6月29日に配信された、AKLOを迎えた楽曲である。ミュージックビデオの再生数は2024年6月に3000万回を超えたと公式アカウントが発表している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配信日 | 2018年6月29日 |
| 客演 | AKLO |
| トラック | dubby bunny |
| MV監督 | 新保拓人 |
| 背景 | ツーマンツアー「A to Z TOUR 2018」に先駆けて公開 |
| 再生数 | 3000万回超(2024年6月時点、公式発表) |
アコースティックなトラックの上に、日常を切り取った言葉が乗せられている。ラッパーと父親という2つの立場を並走させるという、この人物の主題がもっとも広く届いた形である。映像は両者の地元での撮影を軸に構成されている。
この曲が旧版に入っていなかったのは、記事が2019年以前の状態で止まっていたためである。再生数だけを見れば、この人物の楽曲で最も多くの人が触れている1曲になる。
All My Homies|地元の仲間を全面に出した1曲
2019年のアルバム「LOVE」に収録された楽曲である。トラックはBACHLOGICが手がけている。
地元での過去と現在が主題になっており、家族を扱う曲とは語り口が明確に異なる。生活を主題にした路線が続いていた時期に、共に育った仲間の側を前面へ出した曲であり、次作「新小岩」への橋渡しにあたる。
曲名は、のちに設立する自主レーベルの名称にもなった。楽曲がそのまま活動の枠組みの名前になった例である。
家庭の事情|自身の家庭環境を正面から扱った1曲
2021年5月9日に配信された楽曲である。のちに同年8月4日発売のEP「925」へ7曲目として収録された。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配信日 | 2021年5月9日 |
| 収録 | EP「925」、2021年8月4日発売、全7曲 |
| プロデュース | BACHLOGIC |
| トラック | アコースティックギターの音色を使用 |
| MV監督 | 山田健人、配信前日の5月8日に公開 |
| チャート | Billboard JAPANのダウンロード・ソングで初登場4位、14,663ダウンロード |
自身の過去から現在に至るまでの家庭の事情を、正面から扱った楽曲である。「Letter」が子どもへ宛てた曲であるのに対し、こちらは自分が育った側の話にあたる。同じ「家庭」という語を扱いながら、立っている位置が逆である。
アコースティックギターを軸にしたトラックは、この人物の楽曲でも編成が薄い部類に入る。言葉が前に出る構成であり、内容の重さがそのまま伝わる作りになっている。
EP「925」は客演を一切置かず、全7曲のプロデュースをBACHLOGICが担当している。前作「新小岩」と同じ体制であり、独立後の制作がこの組み合わせを軸に進んだことが分かる。
CHAPTER 04 / SECTION 07近年の1曲|2026年のZORN
独立以降も、地元を主題にする姿勢は変わっていない。ここでは2026年の楽曲を扱う。
地元LOVE feat. 後藤真希|20年変わらない主題の現在形
後藤真希を客演に迎え、BACHLOGICがトラックを手がけた楽曲である。曲名をそのまま冠したワンマン公演が、2026年7月30日に地元のかつしかシンフォニーヒルズで開催された。
同会場では2019年7月28日にもワンマン公演が行われており、7年ぶりの地元凱旋にあたる。武道館やアリーナ規模の会場を経たあとで、地元のホールへ戻る形になっている。
「葛飾ラップソディー」から10年近くを経ても、扱う対象は同じ場所である。会場の規模が変わっても主題が動かないことが、この人物の一貫性を示している。
CHAPTER 04 / SECTION 0813曲の一覧|収録情報と聴きどころ
ここまで紹介した13曲を、時期と主題とあわせて一覧にする。どの目的で聴くかによって、選ぶ曲が変わる。
| 曲名 | 時期 | 主題 | 聴きどころ | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| My life | 2016年 | 日常 | 生活と仕事と家庭を並べる構成 | とりあえず一曲だけ聴きたい人 |
| 奮エテ眠レ | 旧名義期 | 若さと荒れ | いまとの落差 | 変化の幅を知りたい人 |
| 2 Da Future | 2020年 | 反抗期 | 独立後の作品にある旧名義期に近い温度 | 遡って聴きたい人 |
| Reverse | 2015年 | 下積みと仲間 | 関係の続き方を扱う視点 | 進路に迷っている人 |
| 夕方ノスタルジー feat. WEEDY | 2016年 | 幼少期 | 懐かしさを軸にした情景描写 | 地元がある人 |
| Letter | 2016年 | 家族 | 過ごした時間を血縁より重く置く姿勢 | 家族を持つ人 |
| かんおけ | 2017年 | 死生観 | O.N.Oのトラックが生む疾走感 | 重い主題を聴きたい人 |
| 新しい日々 | 2017年 | 再起 | 平凡を到達点として置く構成 | 底から戻ろうとしている人 |
| 葛飾ラップソディー feat. WEEDY | 収録アルバム未確定 | 地元 | ないものを数えてから肯定へ運ぶ構成 | 地元を離れた人 |
| Walk This Way feat. AKLO | 2018年 | 二足のわらじ | 最も再生されている1曲 | まず有名曲から入りたい人 |
| All My Homies | 2019年 | 仲間 | 家族の曲とは異なる語り口 | バックボーンを知りたい人 |
| 家庭の事情 | 2021年 | 育った側の家庭 | 言葉が前に出る薄い編成 | Letterと対で聴きたい人 |
| 地元LOVE feat. 後藤真希 | 2026年 | 地元 | 20年変わらない主題の現在形 | いまのZORNを知りたい人 |
一覧から読み取れるのは、手元にある題材だけで20年以上書き続けてきたという点である。地元、家族、仕事、そして仲間。扱う対象が増えたのではなく、同じ対象を見る角度が変わってきた。
CHAPTER 05 / SECTION 09聴き方ガイド|入門順と目的別
目的によって、聴く順序を変えるほうが早く掴める。速さを取るか、20年を追うか、状況に重ねたいかの3つの入り方を示す。
| 目的 | おすすめの順序 |
|---|---|
| とにかく速く掴みたい | My life → Walk This Way feat. AKLO → 葛飾ラップソディー feat. WEEDY |
| 20年を追いたい | 奮エテ眠レ → Reverse → My life → かんおけ → All My Homies → 家庭の事情 → 地元LOVE feat. 後藤真希 |
| いまの状況に重ねたい | 新しい日々(再起)/Letter(子へ)/家庭の事情(親へ)/Reverse(進路) |
とくに2つ目の順序は、旧名義期から2026年までを圧縮して辿る形になる。荒れた語り口の時期、生活へ視点が移る時期、そして地元へ戻る時期という並びである。旧名義期の曲と最新曲を並べて聴くと、変わった部分と変わっていない部分がはっきり分かれる。
向いていないケース|派手な高揚感を求める人
誇示や高揚を主体とした曲を求める人には、近年の作風は向かない場面がある。この人物の曲は、生活の細部を積み上げる形で組み立てられており、瞬間的な爽快さを狙った構造ではない。
ただし、旧名義期や客演曲には別の顔がある。近年の作風だけで判断すると、この人物の幅を取り違えることになる。その場合は「奮エテ眠レ」から入るほうが接点を作りやすい。
CHAPTER 05 / SECTION 10配信で聴く|最新作と公演情報
ZORNの作品は、主要な配信サービスで聴取できる。2019年の独立以降も継続して作品を発表しており、記事の情報も更新頻度が高い領域になっている。
| 項目 | 確認できている内容 |
|---|---|
| 配信 | 主要な配信サービスで聴取可能 |
| 9thアルバム | 新小岩、2020年10月28日に事前告知なしで発表、BACHLOGICが全曲をプロデュース |
| EP | 925、2021年8月4日発売、全7曲、客演なし、BACHLOGICが全曲をプロデュース |
| アナログ盤 | 「新小岩」「925」「Rap」「地元LOVE」の4作品、8月26日リリース |
| 2025年の楽曲 | 戦争と少女、2025年8月19日配信、Nujabesの楽曲を使用 |
| 直近の公演 | ワンマン「地元LOVE」、2026年7月30日、かつしかシンフォニーヒルズ |
| 2026年2月 | 日本武道館「Family Day」、OZROSAURUSとのツーマン、All My Homies初公演 |
| 2026年11月 | 「A2Z 2026」、AKLOとのツーマン、東京ガーデンシアター |
| 東京ドーム | 2022年11月3日のさいたまスーパーアリーナ公演「All My Homies」で開催を発表 |
2025年8月19日に配信された「戦争と少女」は、この人物の楽曲のなかでも特異な位置にある。2010年に亡くなった音楽プロデューサーNujabesが遺した楽曲をトラックとして使用しており、Nujabesの楽曲に公式に日本語のラップが乗せられたのはこれが初めてだと報じられている。同氏が主宰したレーベルの全面協力のもとで制作された。
この楽曲は、戦後80年の特別番組として2025年8月18日にNHK総合で放送された「NHKスペシャル『戦火の時代(いま)に紡ぐ歌 PASS THE MIC』」で制作の過程が紹介された。地元で1945年に起きた出来事を題材にしており、当編集部が確認した範囲では、当事者への取材をもとに書かれたと本人が説明している。ミュージックビデオは映像作家の山田健人が担当した。
ヒップホップはそもそも「声なき声」を拾い上げてきた音楽
NHKスペシャル「戦火の時代(いま)に紡ぐ歌 PASS THE MIC」制作の動機について、本人はこのように説明している。体験した人が少なくなっていくなかで、誰かが伝えなければ無かったことになってしまう——その懸念が出発点にあったという。
※「戦争と少女」については、公式ミュージックビデオの動画IDを当編集部で特定できなかったため、本記事では章立てを行っていません。
CHAPTER 06 / SECTION 11本記事で扱わないこと
この人物については、楽曲以外の話題も多く流通している。当編集部が意図的に扱わないものを、理由とともに明示する。
| 扱わない事項 | 理由 |
|---|---|
| 引用の要件を満たさない歌詞の新規追加 | 出典明示・主従関係・最小限の分量のいずれかを欠くため |
| 曲の優劣や順位 | 同じ書き手の楽曲に編集部が順位を付けても判断材料にならないため |
| 子どもの出自や続柄の断定 | 未成年に関する事柄であり、本人が公にしている範囲を確定できないため |
| 過去の経歴に関する推測 | 一次情報を確認できないため |
| 収録アルバムが確定できない楽曲の年次 | 媒体間で記載が食い違うため、確定できないものは未確定と明記 |
既存記事に掲載されていた歌詞は削除していない。不足していた出典表記と解説を書き足す形で是正し、原文はそのまま残している。また、旧版は家族を扱う曲の解説で、子どもの続柄に踏み込んだ記述を行っていた。未成年に関する事柄であり、本人が公にしている範囲を当編集部で確定できなかったため、本記事では「家族に宛てた曲」という記述に留めている。
CHAPTER 06 / SECTION 12ZORNのおすすめ曲に関するよくある質問(FAQ)
ZORNの楽曲への検索で繰り返し現れる疑問は、最初の1曲、名義の変遷、そして近年の活動状況の3方向に集中している。確認できている範囲で回答する。
CHAPTER 06 / SECTION 13まとめ|手元の題材で遠くまで届いた書き手の、聴きどころ
ZORNは、東京都葛飾区新小岩を拠点とするラッパーである。ZONE THE DARKNESS名義でMCバトルから頭角を現し、2014年に改名した。2019年には自主レーベル「All My Homies」を設立している。
最初の1曲を選ぶなら「My life」になる。ラッパーとしての活動と、勤め人としての生活と、父親としての役割が、同じ地平に並べて描かれている。再生数で選ぶなら「Walk This Way feat. AKLO」が最も多くの人に届いている。
2021年の日本武道館から横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナと規模を広げ、東京ドーム公演の開催も発表されている。そのあとでも、2026年には地元のホールでワンマン公演を行っている。扱う対象は20年以上ほとんど変わっていない。地元、家族、仕事、そして仲間である。手元にあるものだけで書き続けたことが、この人物の聴きどころである。
この記事の要点
- 最初の1曲は「My life」、日常そのものを主題にした代表曲
- 再生数が最も多いのは「Walk This Way feat. AKLO」、2024年6月に3000万回を突破
- 本記事は旧名義期1曲・昭和レコード期5曲・柴又日記期3曲・独立前後3曲・近年1曲の計13曲を紹介
- 旧版のアルバムリリース年に複数の誤りがあったため、実査した値へ全面的に訂正
- 既存の歌詞5ブロックは原文のまま維持し、出典表記と解説を書き足して引用の要件を満たす形へ是正
- 2022年11月3日のさいたまスーパーアリーナ公演で、東京ドームでのワンマン開催を発表
- 2026年7月30日に地元のかつしかシンフォニーヒルズでワンマン公演を開催
— Djtube 編集部 / 2026.08
※本記事は、レーベル発表・配信サービスの公式情報・音楽メディアの報道で確認できた事実のみを記載しています。歌詞は引用の要件を満たす範囲で原文のまま掲載し、家族に関する記述は本人が公にしている範囲を確認できたものに限っています。確認日:2026年8月18日。
