環ROY言葉の意味と、身体が刻むリズムのあいだで
環ROY(タマキロイ)は、仙台出身のラッパー。MCバトルで注目を集め、ソロ作品を重ねながら、ダンサーとの舞台や絵本の文章にも活動を広げてきた。ラップから別の表現へ乗り換えるというより、言葉の音、意味、身体の動きが触れ合う場所を探している。親しみやすい「YES」から、自作のビートで組み立てた「Anyways」、U-zhaanや鎮座DOPENESSとの共同制作まで、その試みをたどる。
CHAPTER 01 / SECTION 01環ROYのプロフィールと読み方
読み方は「タマキロイ」。本名についてはタマキリョウと紹介されてきた。RYOをROYへ並べ替えたのではないかという説明もあるが、命名理由を語った本人の言葉とは分けて受け取りたい。
身長は、2024年のHERENESSによる本人インタビューで170cmと掲載された。音源のレーベル表記と、芸能事務所への所属は同じ意味ではない。「Anyways」の発売元はB.J.L. X AWDR/LR2である。
CHAPTER 02 / SECTION 02仙台のスケート少年からラッパーへ
スケートビデオと「人間発電所」
仙台で育ち、中学生のころはスケートボードに夢中だった。入口は友人の兄に見せてもらったスケートビデオ。そのBGMでThe OffspringやGreen Dayを聴いていたので、最初からヒップホップ一筋だったわけではない。
変わるきっかけになったのは、高校受験の勉強中に聴いていたラジオだった。BUDDHA BRANDの「人間発電所」に衝撃を受け、日本のラップから海外のヒップホップまで聴くようになる。後に音楽の幅が広がっても、ここで受けた熱は制作の根に残っている。
上京、大学、MPCを買った友人
高校卒業を機に上京して大学へ進学。大学2年のころ、MPCを買った友人からラップを勧められ、自宅でデモを録音し始めた。DJの機材やレコードも買い、クラブへ通ううちに、音楽を一緒に作る仲間が増えていった。
J-WAVEの本人取材では、2003年に活動を始め、2004年にはコンピレーションへ参加した流れを振り返っている。大学は卒業しているが、大学名は明らかにしていない。出身高校は仙台市立仙台高等学校と紹介されてきた。
DMRと、2005年前後のMCバトル
ダースレイダーが公開したDMR「Da Me Reco Party」。ダースレイダー、METEOR、環ROY、太郎、KEN、はなび、INDARA、ガスケン、DJ TA2ROらが集う制作の記録だ。大学卒業前にはDMRとしてCDも出し、個人のデモからクルーの活動へとつながっていた。
2005年前後はMCバトルにも積極的に参加。バトルの盛り上がりを通じ、即興のラップが注目されるようになった。一方で、フリースタイルができるだけでは生活を支えるのは難しいと考え、音源の制作へ力を入れていく。
元の紹介で取り上げられていたのは、相手をバグの起きたファミコンに見立て、カセットを抜いて息を吹きかけ、直してしまうという比喩。身近な動作をその場の攻防へ変える、当時の即興表現を伝えるエピソードである。
CHAPTER 03 / SECTION 03環ROYの家族と服装
本人が語った、妻と子供との散歩
福音館書店が再掲した「母の友」2018年5月号の本人談には、当時0歳だった子供、妻、自分の3人で散歩する話がある。散歩の途中で見たのは、工事現場の前にいる5歳ほどの子供と、その父親だった。何をしているのか尋ねられた父親が、恐竜の化石を掘っているのだと答えると、子供は恐竜の種類へ話を広げたという。工事から発掘、恐竜へとイメージがつながる面白さを、環ROYは即興の言葉づくりにも重ねている。
以前の紹介には、2017年5月1日と2020年1月26日に女の子が生まれたとの記載があった。また「Flowers」のMVに子供が登場したことも紹介されている。こうした当時の公開情報から、婚姻日や現在の家族構成の全体までを決めることはできない。
2017年の出産報告を受けた反応として、ガス。は結婚と子供の存在に驚き、りこぴんも結婚していたことへの意外さを表していた。家族について語られる機会が少なかったころの、リスナーの受け止め方を伝えている。
普通に見える服の、形や素材を選ぶ
以前から挙げられていたブランドはAdidas、The North Face、HAGLOFS。Adidasのスニーカーや舞台練習の運動着、FUGAHUMのバッグなど、スポーツやスケートの延長にある装いが紹介されていた。サングラスについては、以前の紹介に「SOPHIE HULUM」「SOPHIE PHULUM」という表記の揺れもある。
2021年のユナイテッドアローズの本人取材では、見た目は普通でも上質なものを選びたいという考えを話している。形や素材に、作り手が試行錯誤した跡を感じられるかどうか。派手な記号を足すより、細部の違いを面白がる服選びだ。
2024年のHERENESS取材では、身体を動かす制作にも使うSMOOTH WOOL T-SHIRTを着用。ラップ、ダンスとの共同作業、普段の生活が、服装の上でもつながっている。
CHAPTER 04 / SECTION 04環ROYのMBTIを編集部が推定
編集部では、制作についての公開発言からINTPを推定する。本人が公表したMBTIではない。
判断の手掛かりは「Anyways」の作り方にある。環ROYはFNMNLの取材で、まず短い声のフレーズを録り、ビートへ合わせ、後から言葉を組み立てる手順を説明した。「泉中央駅」では、コードが4拍子で進む一方、途中からドラムとラップが5連符になる構造を試している。既存の型をそのまま使うより、音と言葉の関係を試し、仕組みを作り直す選択に注目した。
一方、舞台では相手と決め事を共有し、会場の身体や声に応じて展開を変える。対話のなかで案を広げる面を重く見ればENTPという見方もある。作品づくりの一部からの推定であり、私生活や能力、健康状態を説明するものではない。
CHAPTER 05 / SECTION 05アルバムと近年の音楽活動
「なぎ」から、自分でビートを作る「Anyways」へ
「ラッキー」の後、舞台や映像の仕事も経験し、4年ぶりのソロアルバムとして出したのが「なぎ」だった。凪、薙、梛。同じ音から複数の意味が立ち上がる題名のように、歌詞でも一つの説明へ閉じない言葉を探した。
次の「Anyways」は、自分でビートを作る方向へ進んだ作品。2016年に映画のための制作を頼まれたことが入口となり、Abletonで音を作り始めた。FNMNLの取材では、50曲ほど作って10数曲が採用された経験や、家族と歩いたときに録った落ち葉の音を「Rothko」へ使った話をしている。身近な音を録り、切り取り、ラップと組み合わせる制作へ移った。
ビート集「Furniture music, contemporary」
2022年にカセットで発表した「Furniture music, contemporary」は、ヘアサロンTETROのBGMとして制作したビート集。2023年には「16 raw umber」「54 ice blue」「02 ivory」「27 chinese red」の4EPへ再編集され、1月25日から3月8日にかけて配信された。ソロのラップアルバムとは異なる、空間に置く音の仕事だ。
「デザインあneo」の音楽
NHK「デザインあneo」の音楽にも参加。2025年4月18日の第1集では「図(間取り図)」、5月5日の第2集では「アーキテクチュア(Tanikawa House)」を歌い、6月6日の第3集では「図(棒グラフ)」や国立代々木競技場、せんだいメディアテークを扱う「アーキテクチュア」を担当している。7月7日の第4集は蓮沼執太名義で、同じシリーズでも本人歌唱作品を区別して聴きたい。
2026年の「エナジー風呂」EP
2026年4月26日には、坂本龍一、U-zhaan、環ROY、鎮座DOPENESSによる「エナジー風呂」が新たなアナログ盤に。2019年の曲と「energy flow – rework」に、「天然エナジー風呂」「テクノポリス」を加えた構成である。U-zhaanによれば、坂本のピアノ演奏や、以前2人で録った「Technopolis」の音源を用いてラップを加えている。坂本が2026年に新録したという意味ではない。
CHAPTER 06 / SECTION 06環ROYの曲を聴く入口
YES
2013年の「ラッキー」の最後に置かれた曲。音楽は環ROYと蓮沼執太、映像は古屋蔵人、後藤武浩、稲本伸司が手掛けた。ラップの言葉を身近なポップソングの手触りへ開く、環ROYを知る入口になる。
出会いと別れを一息でつなぎ、涙と光がこぼれる景色を重ねる。悲しみを消して肯定するのではなく、別れがある日々を含めて「YES」と言う。その順番が、曲の温かさを支えている。
フルコトブミ
2017年の「なぎ」収録曲。音楽は環ROYとArμ-2。MVの監督には後藤武浩、島地保武、環ROYが名を連ね、島地と石橋静河が踊る。ラップ、音、身体が、物語の距離や変化をそれぞれの方法で表している。
本人がQeticで明かした下敷きは古事記。イザナギが黄泉の国へ行き、イザナミから逃れ、地上で穢れを落とすところまでを扱ったという。歌詞だけを追うと、戻れなくなった2人の話にも聞こえる。神話の固有名を説明し尽くさず、別離の感触をいまの言葉へ移している。
Offer
「なぎ」の2曲目。AXISの本人取材では、16小節を起承転結のように捉え、8小節から12小節にかけて展開を変える組み立てを説明している。歩道橋、信号、魔法、車道といった語を、意味だけでなく響きからも結んでいく。韻を踏むことと、聞き手が景色を思い浮かべることを同時に考えた制作の例だ。
同じ場所にいても、かつての2人へは戻れない。その隔たりを、残った言葉と街の光景がつなぐ。英語詞を担うK.A.N.T.Aと日本語のラップが同居し、意味と響きの異なる層を作っている。
BUNKA
U-zhaan、環ROY、鎮座DOPENESSが言葉と音楽を作った共同曲。2016年の録音後、ライブで披露され、2019年にMVが公開された。2021年の共同アルバム「たのしみ」にも収録。mabanuaはバスドラム、フィンガースナップ、ミックスを担当している。
タブラとヒップホップの歴史を交互にたどる構成が特徴だ。元の紹介が注目したのは、アフリカ・バンバータ、ブラック・スペーズ、ズールー・ネイションをたどり、知識、自由、平和、愛という言葉へ進む部分。これは曲が描く文化史の筋道であり、個々の歴史的評価すべてを曲だけで証明するという意味ではない。
MVは磯部蒼が監督。ヒップホップの人物画を永積崇、タブラや文化のイラストを福山武志、字幕と色の選択を長嶋りかこが手掛ける。名前や年代をラップのテンポへ乗せ、字幕と絵で追えるようにした共同制作でもある。
深町パーク feat. 環ROY
DJ HAZIME「深町パーク feat. 環ROY」を正規配信で聴く
2026年7月23日配信のDJ HAZIME名義の曲。環ROYが作詞・ラップを担い、DJ HAZIMEとSUIによるThe Bangazがトラックを制作。Manhattan Recordingsから発表された客演作品であり、環ROYのソロアルバムとは区別される。
仮有0二 feat. 環ROY & U-zhaan
2026年5月30日の原口沙輔「イ三」に収録。環ROYが作詞とラップ、原口が作曲・制作・ピアノ・プログラミング、U-zhaanがその他の楽器としてクレジットされる。アルバム全曲への参加ではなく、この曲の役割を見ておきたい。
車やビルという街の風景から、脳、証明書、思想、金融へ対象が広がる。細かな物の描写だけで終えず、人が暮らす仕組みまで視野を移すラップだ。環ROYが単独で作詞・ラップを担ったことを曲別クレジットで確認できる。
CHAPTER 07 / SECTION 07舞台・絵本・広告での制作
ワンダフルと、映像への評価
「ラッキー」の1曲目。音楽は環ROYと三浦康嗣。グリーンバックの前で撮った環ROYのパフォーマンスを短く切り、約40人のクリエイターが別々に加工して、1本へ戻したMVである。ラップする同じ身体が、作家ごとに違う世界へ置き直される。
「ワンダフル」は第17回、「ことの次第」は第21回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品に選ばれた。また、環ROYが音楽で参加した「SPACE BALLOON PROJECT」は第15回エンターテインメント部門大賞の受賞プロジェクト。共同企画の受賞であり、環ROY個人が同賞を単独受賞したという意味ではない。
SPACE BALLOON PROJECTの制作映像
Galaxyによる制作映像。2011年のプロジェクトへ環ROYが音楽で参加した経緯を伝える資料で、ソロ曲のMVとは異なる。広告の音楽にもラップの表現を持ち込んでいた時期の仕事だ。
島地保武との「ありか」
愛知県芸術劇場が公開した「ありか」の映像。2016年に始まった島地保武との共同作品で、2人が出演・演出、島地が振付、環ROYが音楽を担う。ここに置いたのは2018年公演を紹介する映像である。
旧紹介では11公演とされていたが、2024年の本人取材では30回以上を上演したと話している。愛知、神奈川など国内で重ね、2020年3月にはパリ、2025年には香港でも上演。2026年9月19、20日には10周年を迎えた愛知県芸術劇場での公演が告知された。
富山県美術館での「オリガミ」、札幌文化芸術交流センターSCARTSの「Fine Game」なども、言葉と動きの関係を扱う活動だ。2026年の富山県美術館「続・Fine Game―声と言葉を置いてみる」では、前年の参加型パフォーマンスでつながれた声と言葉に、柏木美月のグラフィックが加わった。
ラップのリズムを絵本の文章へ
「まいにちたのしい」は2019年8月22日発売。KAKATOが文、オオクボリュウが絵を担当した。「ようようしょうてんがい」は2020年12月号の「こどものとも」で発表した文章作品で、2025年11月12日には単行本として刊行された。同じ題名でも、月刊誌と単行本の刊行は別の出来事だ。
2021年1月14日発売の「ほらぴったり」は、ナオミ・ジョーンズの文、ジェームズ・ジョーンズの絵を環ROYが翻訳した本。2人の原作者と、翻訳をした環ROYの役割を分けておきたい。さらに「こどものとも」2024年8月号には、環ROYが文、MISSISSIPPIが絵を担当した「よなかのこうえん」がある。
MUJI HOTEL SHENZHENの映像
無印良品が公開したホテルの紹介映像。環ROYの公式制作歴にも、2018年の広告映像への出演として記載されている。音源の発売ではなく、映像に出演した仕事である。
H BEAUTY&YOUTHのオープニング映像
BEAUTY&YOUTHが公開した2016年の映像。蓮沼執太がトラック、環ROYがボーカルとして参加した。映像のモデル出演者とは役割が違うため、音楽参加をそのまま本人の画面出演とは捉えない。
Pepper「ペパリズム」の紹介記事も、音楽以外の活動をたどる手掛かりになる。
ほかにも、江崎グリコ「Glico YATAI」、Pepper「ペパリズム」、テクネトライ「ぷろ ぷろ ぷろ ぷろ ぷろじぇくしょん!」、仙台市地下鉄東西線「TOZAI-SEN APPLICATION」、スペースシャワーTV「SWEET RUDENESS」、コカ・コーラ「Coke ON」、日清食品「SAMURAI NOODLES」、NHK「デザインあ」の「めでたい」、ソニーの「PS4® Lineup Music Video」への参加が紹介されてきた。音楽制作、歌唱、出演の形は作品ごとに異なる。
元の紹介にあった制作映像の導線は、テクネトライ、東西線関連映像、SWEET RUDENESS関連映像。映像ごとの参加形態をたどる資料として残っている。
公式制作歴には2026年のOpenAI「ChatGPT」広告映像への音楽提供も掲載されている。音楽提供の実績は以前の紹介に挙がった12案件にとどまらず、その後も映像や展示の制作が続いている。
CHAPTER 08 / SECTION 08KAKATOと仲間とのつながり
KAKATOとBuffalo Daughter「New Rock 20th」
Buffalo Daughter自身が公開した「New Rock 20th featuring KAKATO」のレコーディング・ダイアリー。2013年7月24日の「ReDiscoVer.」に入るKAKATO参加版の制作を伝える。配信ページにある2021年の日付は再配信の版で、初めて共演した年とは異なる。
KAKATOは鎮座DOPENESSと環ROYのユニット。フリーダウンロードの「KARA OK」、拡張版「KARA OK 2nd Edition」を発表してきた。2013年にはタイのBig Mountain Music Festival 5に出演し、「JAPANESE IN THE THAI」も制作。音源に限らず、「デザインあ」への参加や絵本へも2人の言葉遊びを広げている。
U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS「たのしみ」
U-zhaanとはライブと音源の両方で関わり、2021年には3人名義のアルバム「たのしみ」を発表した。これまでに語られてきた国内の影響源はBUDDHA BRAND、SEEDA、KREVA、ANARCHY、般若、NORIKIYO。海外ではKanye WestやJay-Zが挙がる。自分で音を作るようになった時期の本人取材でも、海外のラッパーが制作まで担う姿勢への関心を語っている。
サカナクションとの出会い
サカナクションの2014年シングル「さよならはエモーション/蓮の花」の付属DVDダイジェスト。2013年11月28日放送の「グッドバイ」セッションと、山口一郎・環ROYの対談を収録した内容が紹介される。環ROYによる「映画」のリミックスMVという意味ではない。
交友の入口は、環ROYが「映画」のトラックでフリースタイルをして自身の作品を宣伝し、それをサカナクション側が見つけたことだったと紹介されている。□□□の三浦康嗣とはイベントで一緒になり、「Public-image」のコンピレーションへ誘って一緒に曲を作ってから親しくなったという。
KEN THE 390「Lego!! Remix」
KEN THE 390が公開した、2012年の「Lego!! Remix」。SKY-HI a.k.a.日高光啓、KLOOZ、環ROY、TARO SOULが参加し、トラックはist。DMR時代からの同期のつながりが、それぞれの名義で活動するようになってからも曲へ結び付いた。
即興の面白さ、ポップスへ開く歌、神話を読み替える文章、身体との共同作業。どれも一人で完結する表現ではなく、共演相手の方法と接することで形を変えてきた。U-zhaan、三浦康嗣、蓮沼執太、島地保武らとの関係をたどると、環ROYの活動の広がりが見えてくる。
CHAPTER 09 / SECTION 09よくある質問
声を置く場所が変わるたび、ラップの聴こえ方も変わる。環ROYの仕事は、その違いを一つずつ確かめるように続いている。
Djtube 編集部
