ralph横浜から広がるラップと、そのルーツ
ralph(ラルフ)は、神奈川県横浜市出身のラッパー。Double Clapperzらと作る鋭いビートへ、低い声と切れのよいラップを重ねる。「ラップスタア誕生」シーズン4で優勝した2020年が、大きく知られる節目になった。
グライムやドリルと結びつけて語られることが多いが、本人は一つのジャンルの代表であることを目指しているわけではない。初期の「Selfish」「No flex man」から、VERRY SMoLを迎えた2026年の「concrete camo」まで追うと、変わらない声の強さと、作品ごとに広がる表現の両方が見えてくる。
CHAPTER 01 / SECTION 01ralphのプロフィールと生い立ち
1998年生まれ。誕生日の月日が確認できないため、年齢は2026年中で27〜28歳の幅になる。「—」は記載できる情報が揃っていない項目で、結婚や子供などの有無を断定する表示ではない。
インド人とのハーフで、一人っ子として育ったと紹介されている。子供のころには外見を理由にいじめられ、一人で過ごすことが多かったという。強くなろうと格闘技を習い、そこで出会った人からヒップホップを教わった。日本語ラップを聴き、自分でも遊びでラップを続けていた時期がある。
12歳のころに出会ったANARCHY「Fate」
これはralphの曲ではなく、12歳のころに観て強く影響を受けたと語るANARCHYのMV。自分の中にあった気持ちが言葉になっていると感じ、日本語のラップを自分の表現へつなげていった。
家の暗さに子供が慣れてしまうという一節に、ralphは自分の境遇と近いものを感じたと話している。曲の中の具体的な生活の描写が、当時うまく言葉にできなかった気持ちを受け止める入口になった。
ただし、自分の育ちをすべて曲の看板にするわけではない。団地での暮らしや経済的に苦しかった時期についても、それ以上の境遇の人がいるし、自慢することではないという考えを語っていた。
CHAPTER 02 / SECTION 02インドネシアとガネーシャ

幼少期には短い間、インドネシアでも暮らした。右腕のタトゥーにあるガネーシャは、その土地で何度も目にして、強く記憶に残った存在だという。本人の説明は、信仰の公表という意味ではない。
FNMNLの取材では、信仰しているわけではないものの、ガネーシャがいろいろな場所に祀られていたので覚えていると説明した。
好きな逸話として語ったのは、ガネーシャと弟が世界を回る競争をする話。父シヴァに命じられた競争で、ネズミに乗るガネーシャは、孔雀に乗る弟と速さでは勝負せず、両親の周りを3周する。両親こそ自分の世界だと答える、その見方の転換に惹かれたという。これは、本人が紹介した神話の一つの語り方として受け取りたい。
家族で泊まったホテルの近くでバリ島の爆弾テロが起きた経験も話している。幼少期の暮らしや記憶は、音楽や身体に刻むモチーフを考えるうえで大切な背景だが、そこから宗教や性格を決めつけることはできない。
CHAPTER 03 / SECTION 03ralphの趣味・服装・タトゥー
サバイバルゲームと装備への関心
サバイバルゲームが趣味で、装備を自分で揃え、仲間と遊ぶ様子をSNSにも載せていた。モデルやDJとして活動する浅井なつみからも、サバゲー用の銃を買っているという話が出ている。
小学生のころにはガスガンやエアガンを友達の間で売買し、冗談めかして地域の銃の密売人のようだったと話したこともある。ここで話している対象は玩具のガスガンやエアガンであり、この逸話を実銃の犯罪歴へ置き換えることはできない。
黒い服、グリルズ、ウォレットチェーン
服装は黒を基調とし、フェイスマスクや目出し帽のようなアイテムも取り入れる。金のグリルズ、シルバーのウォレットチェーンが、全身の黒に対するアクセントになる。もともと服が好きで、10代にはアパレル販売員として働いていた。
黒の上に何をかけても薄まらない。
黒はもっとも目立たない色でありながら、もっとも強い色でもあると捉えている。色を重ねても薄まらないという説明も、その対比につながる。決まった服を着ればralphらしくなるというより、色や小物に何を求めるのかという美意識がスタイルを作っている。
この投稿をInstagramで見る
タトゥーの意味とGUCCIMAZEの文字
この映像では、ニート東京でGUCCIMAZEによるタトゥーを語る。首筋の「麻神」、右腕のガネーシャ、左腕の英文などが知られている。左腕は、気に入った英文をGUCCIMAZEにデザインしてもらったものだ。
本人には、その文字を解読してもらいたい気持ちもあるという。
英文が何と書いてあるかは自分から明かしたくないという。その言葉を読む楽しみまで含めて、文字のデザインを身体へ取り入れている。アカウント名のganeshも、ガネーシャとのつながりを示すものだ。
CHAPTER 04 / SECTION 04ralphのMBTI推定
Djtube編集部は、ralphをINTJと推定する。本人公表の診断結果ではなく、公開された創作や発言から考える仮説だ。
根拠の一つは、自分の出自を強調するより、どの言葉を作品に載せるかを自分で選び取る姿勢。もう一つは、グライムやドリルの代表という外からの分類をそのまま引き受けず、Double Clapperzとよい音楽を作ることを優先する立ち位置だ。タトゥーの文字をすべて説明せず、受け手の解釈も残す選択にも、作品を自分の基準で組み立てる考えが見える。
一方で、こうした姿勢は制作上の判断であって、日常の社交性や計画性の全体を示すものではない。実践を重ねるタイプとしてISTPとも読める。幼少期のいじめや出自から性格が決まるという推定ではなく、診断や人格評価にも使えない。
CHAPTER 05 / SECTION 05ラップを本気にした出会い
Tohjiと「Higher」、Platina Adeでのライブ
このMVはTohjiとgummyboyのMall Boyzによる「Higher」。共通のトラックメイカーとのつながりがあったralphへ、Tohjiが出演を頼むDMを送った。撮影の日に初めて対面したことが、交流の入口になった。
出演してほしいという依頼の内容は、ralphが当時のDMを振り返って語ったものだ。
Tohji主催のイベント「Platina Ade」にも出演。当時の出演者の中では知名度が低かったが、観客が大きく反応してくれた。そこで、自分が本気で言葉を届ければ伝わると実感し、ラップへ本腰を入れる。
こっちが本気でぶつければ伝わる
グライム、ドリルという呼び名との距離
グライムは2000年代初頭のロンドンで、UKガラージなどから生まれた音楽。電子音やベース、ラップを組み合わせる。ドリルはシカゴで生まれ、その後UKでも独自に発展した。ralphの切れのよいラップとDouble Clapperzのビートは、この二つの言葉と結びつけて紹介されてきた。
ただし本人は、グライムやドリルを代表するMCだとは考えておらず、そこから直接影響を受けたという説明にも距離を置く。制作の多くをDouble Clapperzが担っていることから、そう聞こえるのではないかという見方だ。
Double Clapperzも、グライムを広めるという使命より、自分たちが格好よいと思う音楽を作っているのだろうと捉えていた。
ジャンル名は音を探す入口にはなるが、その名前を守るために音楽を作っているわけではない。この違いを押さえると、近年の作品の幅も捉えやすい。
この投稿をInstagramで見る
CHAPTER 06 / SECTION 06GUCCIMAZEとDouble Clapperz
GUCCIMAZEとの出会い
GUCCIMAZEは1989年生まれのグラフィックデザイナー。2018年に独立し、Fetty WapやPost Maloneへのグラフィック、Nicki Minajのアルバムのタイポグラフィーなどで知られる。ralphとは、10代に服を販売していたころに出会い、親しくなった。
ヒップホップ好きという共通点があり、同じクルーでも活動。Tohjiとの接点やDouble Clapperzとの出会いを語るうえでも、重要な存在になっている。左腕のレタリングだけでなく、音楽と視覚表現をつなぐ仲間だ。
Double Clapperzが制作の軸に
この映像はDouble ClapperzがralphやMACCHOを語るニート東京のインタビュー。UKDとSintaの2人組で、2012年から活動している。グライムやダブステップへの関心から制作を始め、BBC RadioやRinse FMでの紹介など、海外のDJにも音を届けてきた。
ralphは、友達に聴くよう勧められて彼らの音楽へ惹かれた。その後、Double Clapperzから「斜に構える」をリミックスしたいと連絡が来る。現在まで続く制作のつながりは、この一曲から始まった。
EGL「Sha Ni Kamaeru(斜に構える)feat. ralph」
2017年にSoundCloudで発表され、ralphが客演する形で知られるデビュー期の曲。原曲をEGLが担当し、Double Clapperzのリミックスへつながった。紹介する映像はDouble Clapperz VIPの音源で、原曲と同じ版ではない。
レコードでも発表され、ralphがグライムの音へ触れるきっかけになった作品だ。客演というクレジットと、ralph自身の活動が広がる入口だったという意味のデビューを分けて捉えると、初期の経緯が分かる。
この投稿をInstagramで見る
CHAPTER 07 / SECTION 07ラップスタア誕生での優勝
2020年の「ラップスタア誕生」シーズン4には1416人が応募した。Tohji、WILYWNKA、Leon Fanourakis、¥ellow Bucksらを送り出してきた企画で、ralphが4代目の優勝者になった。
スタジオで同じビートにどう向き合うか、最後にライブで何を見せるか。段階ごとに異なる条件を通り抜けた優勝だった。賞金は300万円。使い道を聞かれた際には、制作に加えて、共に出場した麻凛亜女の息子・匠音へミニカーを買うと答えた。
その返答には、共演者の子供へ贈り物をするという具体的な使い道も含まれていた。制作の資金と、仲間への小さな約束が並ぶ答えだった。
2020年10月29日のXでは、優勝してから伝えたかったため出演を告知していなかったと本人が振り返った。優勝しても自分は特に変わらず、控えているリリースを引き続き届けていくという姿勢も書いている。
CHAPTER 08 / SECTION 08ralphの代表曲と近作
2020年6月には2nd EP「BLACK BANDANA」を発表し、「Selfish」をはじめとする曲で知られるようになった。ここでは初期のタイトなラップを知る3曲と、2026年の共作曲を紹介する。
Selfish
2020年2月発表。Double Clapperzのトラックに、流れるようで輪郭の鋭いラップを重ね、ralphの存在を広く知らせた一曲。「BLACK BANDANA」にも収録された。
お金を積んでも満たされず、頭の中へ書き続けるという言葉には、外側の成果だけでは終わらない創作の欲求がある。曼陀羅や風格という大きな像をつなぎ、自分の立ち位置を言葉で作り上げる。
No flex man
2019年発表、こちらもDouble Clapperzが制作。2020年ごろの紹介では再生数は17万回ほどで、過小評価されているというリスナーの反応も取り上げられていた。これは初期の支持を示す記録で、現在の数字ではない。
誰かの看板や見せかけの態度を借りる相手へ、距離を取る語り口が一貫する。題名のflexが示す誇示に対して、自分の基準を崩さないという曲の姿勢が伝わる。
piece of cake
2019年12月公開のMV。Double Clapperzの音に、短いフレーズを歯切れよく続ける。題名は楽勝、簡単なことという意味の英語表現で、速い言葉運びにも余裕を感じさせる。
ホテルや電話、週末といった断片が短い間隔で切り替わる。長い説明で筋をつなぐより、言葉の響きと切れ目で生活の場面を立ち上げる曲として聴ける。
concrete camo (feat. VERRY SMoL)
2026年5月27日発表。VERRY SMoLが参加し、作曲はDouble Clapperz、プロデューサーにはUKDが記載される。ここではYouTubeの「ralph – Topic」で配信されている公式音源を紹介する。
共同曲全体のフックにある短句。コンクリートの街へ溶け込む一方、感情までは周囲の色に染めないという二重の動きを描く。強く見せることだけではなく、不安や曖昧さの中で自分を保つことへ、言葉の焦点が向いている。
2020年の優勝後から続く作品
2021年にはミックステープ「24oz」、2022年には「Ridin’ Mode」、2024年には「Spliff & Magnum」を発表した。2025年にはS.J.soldierとCarzを迎えた「Assassin」のリミックス、Big Animal Theoryが作曲・制作した「Sightseeing」、14曲入りのアルバム「カイエ」へと作品が続く。Double Clapperzとの軸を持ちつつ、制作相手や共演者を広げてきた。
客演では、2025年11月26日発表のSIMON「IDENTIDAD」に収録された「Stay Unfaded」へ参加。SIMONとralphの作詞・ラップ、GATTEM G JONESの作曲という組み合わせで、自名義とは別の場にも声を届けている。
さらに2026年8月19日には、WAY2WAY名義で「Frontears (feat. Ralph) [WAY2WAY arr.] [Live ver.]」が配信された。「カイエ」に入った曲の新たなライブ編曲版で、Ralphが作詞と歌唱、UKDが作曲、WAY2WAYがプロデュースを担当する。原曲の録音とは版を分けて聴きたい。
2026年にはMall Boyzの「Mall Tape 3」に収録された「mutant ninja turtles」へ、Tohji、gummyboy、JUMADIBAと参加している。以前からの仲間と曲を作りながら、声を置く場所を増やしている。
CHAPTER 09 / SECTION 09仲間との共演とよくある質問
- Tohji
- Leon Fanourakis
- GUCCIMAZE
- Double Clapperz
- 浅井なつみ
Tohjiは、本気でラップをする契機を作った人物。Leon Fanourakisとは同じ横浜を地元とするつながりがあり、ラップスタア優勝時には祝福の言葉も寄せられた。2020年10月には、Hideyoshiの曲へLeonと共に客演し、フックを挟まずラップをつなぐ共演もしている。
ralphを聴くなら、まず「Selfish」で声と言葉の切れをつかみ、「斜に構える」で制作チームとの出会いをたどる。「concrete camo」まで進むと、強い外見の奥にある、街と自分との距離の取り方も聞こえてくる。
Djtube 編集部

