海外から日本のサイトへのアクセス方法は、VPN利用が一般的ですが、ネット閲覧の厳しい国ではVPNを法的にどう定義しているのかも変わるため一律にはなりません。
まずは、ネット閲覧の厳しい国々がVPN事情、検閲をどうしているのかを見ていきましょう。
目次
VPN自体が違法な国
VPNそのものを違法と定義している国は以下の通りです。
- 中国
- ロシア
- イラン
- イラク
- オマーン
- ベラルーシ
- トルクメニスタン
- 北朝鮮
これらの国に共通している点は独裁国家で、外国からの情報を遮断する目的で政府が厳しい監視を続けています。近年アップデート情報があるのが北朝鮮、ロシア、中国です。
中国に関しては、独特のネット閲覧規制を敷き、頻繁にシステムがアップデートされています。詳細は後の章で解説します。
ロシア
ロシアは2017年にVPN利用禁止法が可決されました。2022年2月のウクライナ侵攻以降はVPN規制強化が一層進んでいることが判明しています。
ロシア政府はFacebook、インスタグラムといった俗にいう西側のSNSや非国営メディアへのアクセスを制限しました。
北朝鮮
北朝鮮は、かつて世界で一番インターネット接続に厳しい国であるといわれてきました。現在はIT技術者養成に力を入れています。
国連安保理事会が2022年10月に纏めた報告書によると、北朝鮮のIT技術者が国籍を偽って海外で労働人口が増えているそうです。
また、サイバー犯罪を請け負って得た莫大な資金で国際的な制裁を逃れているとのこと。
一方で、北朝鮮の人口2597万人のうちインターネットの利用可能な人口は2万人。つまり利用率は僅か0.07%です。世界で一番インターネット利用率が低いことが報告されています。
北朝鮮の国民は「光明網」と呼ばれるイントラネットのみアクセスが許可されているため、現地で販売されているスマホを購入してもインターネットに接続できません。
一部制限があるが合法な国
VPN自体は合法としつつも、ネットの接続先に制限を設ける措置を取っている国は以下のとおりです。
- エジプト
- トルコ
- アラブ首長国連邦(UAE)
エジプト
エジプト政府は2011年1月に起きた反政府デモを鎮圧する一貫として、ツイッターをブロック。これを機にFacebookなどのSNSへの接続が厳しくなりました。
現在は、不道徳と見なされるサイトやアプリへの接続がブロックされています。VPNを使ってアクセスを試みると罰金や刑罰を科せられる可能性があることを留意しておきましょう。
トルコ
トルコもツイッターやFacebookだけではなく、YouTubeやHulu、Amazonプライム・ビデオなどの動画系サイトへのアクセスすることができません。
日本のサイトで閲覧できないサイトは、運営者側でアクセス元が日本のIPアドレス以外を弾いているケースが多いようですが、VPNを経由することで、日本のサイトへアクセスすることができます。
アラブ首長国連邦(UAE)
アラブ首長国連邦(UAE)も政府による厳しいネットの検閲や規制施策を進める国の1つです。アダルトコンテンツ、LGBTQ、政府批判関連など幅広いジャンルのサイトがブロックされています。
VPNは合法だが利用が限定される国
VPNの利用事態に法的な刑罰が存在していないにも関わらず、実質使えないという国も存在しています。
シリア
ウガンダ
シリア
2011年から内線が続くシリアにはVPNに関する刑罰が存在していません。
このため合法ということになるのですが、政府主導によるOpenVPN、L2TP、PPTP といったVPNプロトコルへの攻撃が継続しています。一部のVPNが使えないことが報告されています。
ウガンダ
ウガンダではVPNについては合法ですが、2018年7月よりソーシャルメディア税の法律が施行されました。
ウガンダ国内でインスタグラムやツイッターを閲覧すると、1日あたり200ウガンダ・シリングが発生し、モバイル決済をすると利用額の1%が税金として課されます。
この法律を潜り抜けるためにウガンダではVPNの利用が増加しました。
ウガンダ政府はVPN自体をブロックする動きに出ているため、今は実質利用できないと考えて良いでしょう。
VPNで日本のサイトにアクセスできるケースもある
国民に対してインターネット規制を敷く北朝鮮では、観光客であればVPNを使って日本のサイトにアクセスすることが可能であるようです。
その他のネット閲覧規制が厳しい国でも、VPNが合法であると定義されている国については、日本のサイトにアクセスすることが可能です。
しかし、VPN自体が合法であっても、渡航先がどのようなサイトを非推奨にしているのかを確認しておいた方が良いでしょう。
ネット閲覧の厳しい国・中国のグレート・ファイアウォール
中国はネット閲覧が厳しい国として知られていますが、グレート・ファイアウォールと呼ばれる特殊な大規模情報検閲システムが存在しています。
ここでは、中国のグレート・ファイアウォールについて、作られた背景、変動していくネット規制やVPNに対する中国政府の施策について見ていきましょう。
グレート・ファイアウォールとは?
中国では1998年より大規模情報検閲システム「グレート・ファイアウォール」の運用が開始されました。万里の長城(Great Wall)をもじって作られた名称であるようです。
グレート・ファイアウォールは中国国内のインターネット通信の監視を行うだけではなく、接続の規制、遮断も行っています。
中国では、これらの検閲業務をインターネットポリスと呼ばれる監視員200万人を配置する人海戦術によって行われているとCNNニュースが報じました。
当局はグレート・ファイアウォールを認めていない
なお、中国当局では、グレート・ファイアウォールの存在を認めていません。
それどころか「インターネットにおける言論の自由を含めて、国民の表現の自由を法によって保障される」と中国外交部による記者会見でコメントしています。
しかし、実際には人口の大半の個人情報を収集、アクセス情報の監視強化を行ってきました。
NGOのアムネスティインターナショナルは「中国ではネット検閲と監視によるサイバー反体制派が世界一多い」と報告書を公開しました。
国境なき記者団は「世界最大のネチズン刑務所」と非難していることから、中国当局がいう「表現の自由」とは程遠いものであることがわかります。
グレート・ファイアウォールが作られた理由
グレート・ファイアウォールが作られた理由は、中国共産党に対する不利益な情報を国内に入れないようにするためだと見られているようです。
中国のネットでは圧倒的な強権を敷いている習近平国家主席に対する非難だけではなく、からかいの対象にすることも許されていません。
例えば、習近平国家主席がディズニーキャラクターである「くまのプーさん」に似ていると国外で言われているのですが、国内では規制の対象になっていて、検索することができません。
また、他国のIT技術の情報を締め出すことで、国内のIT市場を外資系企業に奪われないようにする目的もあるようです。
年々中国の規制は厳しくなっている…
こういったグレート・ファイアウォールのもと、中国のVPN規制も年々厳しくなってきているようです。
ネットでは、2023年6月時点で一部のVPNしかアクセスができないという報告がなされています。
このため日本のサイトにアクセスする方法も、徐々に選択肢が減っていっているようです。
ネットでは「VPNを使わなければLINEで日本にいる家族や友人と連絡が取れない」、「YouTubeなどの動画を観ることができない」といったコメントが寄せられていて、中国でのネット事情に対して不安を抱いていることがうかがえます。
2017年にVPNが違法扱いに
2017年1月22日、中国当局は「政府によって許可されていないインターネット通信の取締りを強化する」と発表しました。
同年6月にはサイバーセキュリティ法が施行され、より海外サイトへのアクセス規制が強化されることに。
同年10月、グレート・ファイアウォールを回避する「雲梯VPN」のメンバーが逮捕されるだけでなく、サービスが強制終了となりました。
2019年10月、海外のレンタルサーバー上でVPNのサービスを展開したという容疑で網絡科技有限責任公司法人の代表を務めていた男性が逮捕されています。
中国から日本や海外のサイトにアクセスする方法は?VPNで規制を突破中国ネット企業も罰金処分
近年、中国ではネット企業に対しても罰金が科されています。2021年に中国版ツイッターとして知られるウェイボーの運営会社が5,300万元の罰金を科せられました。
中国当局の発表によると「(ウェイボーが)ネット空間の安全に関する法律や未成年者の保護に関する法律に違反した情報を掲載した」とのことですが、具体的な掲載内容が明らかになっていません。
このニュースが世界中に発信されると、ウェイボーの株価は暴落し、他の中国のインターネット関連銘柄も下落したことが報じられています。
白紙革命がきっかけで更なる強化
中国ではコロナウイルスの蔓延により厳しいロックダウンが断続的に続きました。不満を溜めたウルムチ地区の市民の大規模なデモ活動はやがて白紙革命に繋がっていったのです。
白い紙を持った民衆の無言の抗議は中国全土に広がり、当局は押さえつけることができないと考えたようです。
2022年12月、中国当局はコロナウイルスに対する規制を取りやめることを発表。
市民の結束が呼んだ勝利かと思われましたが、白紙革命が沈静化すると中国当局は抗議に参加した人物を特定し、拘束される人が相次いでいることが報じられました。
上海では、警官が民家に直接入ってきて強制的に携帯電話をチェックするといった、報復も進んでいます。